Prologue-終わりなき円環-

 2029 A.D.――――
NERV本部地下 レベルEEEトリプルイー

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 ――――Andそして…..They lived happily,ever after彼らは末永く、幸せに暮らしましたとさ.

 たまにはそんな終わり方もあって良いだろうに。
 DSSチョーカーの禍々しい光が、瞼を閉じても目を射る。
 永劫の円環。数え切れないほどの始まりと終わり。これもまたそのひとつ。
「…ごめん、これは君の望む倖せではなかったね」
 最後の光景を見るためというわけではない。それでも、もう一度だけ目を開けて…涙でぐしゃぐしゃにした顔のまま、必死で隔てる壁を叩き続ける彼を見た。ダブルエントリーシステムのEVA第13号機。まるでアクリル板を一枚隔てただけのように見えるが、その実、彼と自分の間にはエントリープラグの頑丈な壁と、13号機の神経伝達システムが存在する。
 君が悪い訳じゃない。
 せめてそう言って…滂沱たる涙を拭ってあげることが出来たら。
 無力な掌を一瞥して、嗤う。
 こちらのプラグのコントロールは切られている。センサー系は生きているが、駆動系は全く作動しない。インダクションレバーもロックされた状態。行動を躊躇う自分に彼が業を煮やしたのだ。
 セントラルドグマを埋め尽くす白骨の群れ。ひたすらに寂寞たる光景。無理もない。ここまで連れてきておきながら、急にやめようなどと。
 幾重にも仕掛けられた罠に気付くのが遅すぎたのだ。だからこれは自分の罪。
 その落とし前は自分で付けよう。
「渚カヲル」を第13使徒と認識して作動を始めているこの無粋な機械DSSチョーカーにその本分を全うさせてやれば、サードインパクトの続きは未遂に終わらせることが出来る。

 ――――笑って欲しかった。

 ――――倖せになって欲しかった。

 いつだってそう思うのに、どうして巧くいかないのだろう。

「巧く弾くにはどうしたらいいの?」
「練習さ。繰り返して、思う音が出るまでやってみるだけ」

 ピアノなら、ただ時間を費やせばいい。時間なら、自分にはむほどにあった。
 だが、誰かを倖せにしたいと思ったら…どれだけのものを費やせばいいのだろう。笑って欲しいのに。倖せになって欲しいのに。いつも何かが間違ってしまう。
 彼だけじゃない。数え切れないほど、悲しませた。苦しませた。この身ひとつで贖えるものか。

 光が収束していく…。

 ――――ごめんね。

――――To be continued…

EVER AFTER

Prologue-終わりなき円環-