Senryu-tei Syunsyo’s Novel Room(Novel-Ⅲ)
Evangelion SS「All’s right with the world Ⅱ」

 「すべて世はこともなし」の続編、「楽園に寧日なし」これにて全編のお終いでございます。1

「NEON GENESIS EVANGELION FunFiction」というのもすでにおこがましいような脱線ぶり、しかも相変わらずの超弩級の遅筆におつきあいいただいて本当に有難うございました。結局、夏前から書き始めて結局年内ギリギリになってしまったというのに、辛抱強くご来訪いただいた皆様。千柳亭春宵は心より御礼申し上げます。

楽園に寧日なし

 メインタイトル「楽園に寧日なし」は、「辺塞へんさい寧日ねいじつ無く 北地春晩し」よりのイタダキです。元は漢詩ということですが、ヤン提督の台詞、というほうが通りが良い筈。国境の砦は平穏無事な日がなく、そのような土地には春が来るのが遅いというのが大意らしいです。…や、でもうちの使徒連中にかかると悲愴感もへったくれもなくなるんですが。
生きていこうと思えば何処でも天国エデンになるけど、まあ騒動トラブルには事欠かないよね、というところでしょうか。結構非道い状況も乗り越えてきた使徒連中にとっては、今回の出来事だって「少々立て込んだかなぁ」程度なんでしょうね。ユカリちゃんなんかサキの現着でもう打ち上げの準備始めちゃうくらいですから。

サブタイトルについて

 「Summer Suspition」に始まって「A prime daybreak」まで、今回は杉山清貴さんの曲で揃えてみました。…いえ、本当に曲と話の中身にまぁったく関係無くなってしまったものが殆どなんですが。今回のコンセプトが「夏休み、海辺のリゾート」なので、今回はひたすら新旧とりまぜ杉山さんを聞きまくりました。
杉山さん、大好きです。切ない系の曲も勿論たくさんあるのですが、「僕の腕の中で」とか「Angel Eyes」とか今回イタダいてしまった「Stay the night forever」とか、外野一切締め出しでお互いが居ればそれでいいや、的な恋人たちの曲が結構あります。柳的にはもうこれ以上無いというくらいカヲレイのテーマ(笑)
特にScene6、もーちょっとこのふたりにいちゃついて欲しかった!のですが…ちょっとカヲル君!あそこまでシチュエーション盛り上がってたらもう一歩踏み込むでしょ普通!

 とか言ってますが…ええ、柳が根性なしなのが悪いのですよ。結局。だから間借人に舐められるんですが。

今回の主人公(未回収伏線その壱)

 某11thの話かというツッコミはご勘弁。一応、主役はカヲル君です。
前話「すべて世は~」の初期プロットでは、実のところカヲル君はゲンドウとの戦いに勝ち残ったものの力尽きて昏睡に陥り、シンジ達の前から姿を消す…というひどい話だったのです。しかし、使徒連中が乱入してからは悲愴感がすっかり吹っ飛んでしまいました。やっぱり結構酷い目には遭ったし、しばらく動けなくもなりましたが、一時『仮面』持ちのタカミ君を依代にした関係でアダムとしての記憶を一通り取り戻しての復活となりました。
敵はあらかた殲滅してしまったし、あとはレイちゃんとお倖せにね!という状況なのですが、そー言えば回収してない伏線がいくつかあったということに思い至ってしまったのでした。「すべて世は~」に全部盛り込んでしまうとどうもトーンが変わりすぎて収拾がつかないので、敢えて放置したところも多分にあるのですが…ま、やっぱ書いちゃえというのが今回のお話。
その第1が、カヲル君の変化です。
リツコさんあたりに「自分の命を囮にするような戦い方はおやめなさい」と言われてしまってるように、前話のカヲル君はレイちゃんを護ることが出来るなら自分を含めて世界なんかどーなったって構わないというスタンスでした。レイちゃんとしてはそれが少し哀しくもあったのです。だから今回は、そこから一段階成長して…ちょっと周りも見ながらレイちゃんを護っていこうかな、なんて考え始めたカヲル君を書きたかったのでした。
…書けたかな?うーん微妙(^^;

『自律型AI』の顛末(未回収伏線その弐)

 MAGIのインターフェイス、自律型AIをカヲル君のダミーにインストールしてエヴァの操縦システムに使ってやろうというのが前回ネルフの思惑でした。結果、『自律型』はネルフの手には負えずに盛大にグレて出奔したわけですが、エヴァの制御機能だけのAI(ダミーシステム)はネルフの手許に残りました。
最終的にジオフロントにあったエヴァのダミーシステムは、タカミ君がカヲル君救出の行きがけの駄賃とばかりに壊しました。じゃあグレて飛び出した方はどうなったんだというのが未回収伏線その弐。
「すべて世は~」のラストではタカミ君が出奔したAIそのものだったみたいな書き方をしていますが、実はタカミ君が依代にしてたAIの行方が謎のままになっていたのでした。だから今回は、ナオコさんとリツコさんが作り上げた『自律型AI』はある意味ちゃんと完成し、しかも成長を続けていたというお話でもあるのです。(で、タカミ君を『引っ掻きに』来たと)
全く予想してなかった訳じゃない筈ですが、タカミ君にしてみれば伸ばし伸ばしにしてた宿題を突然どさっと目前に積み上げられて相当慌てたことでしょう。しかし、自分がAIに同調シンクロした所為でリツコさんの研究をぶちこわしにしたと負い目に思ってた訳ですから、赤木母娘のAIがちゃんと成長してたことで、ある意味ちょっと安心したかも知れません。
ミサヲちゃんには「名付けのセンスには恵まれてない」と一蹴されちゃいましたが、タカミ君にとっては結局自分の片割れだし、一番お手軽なところで名前を付けてしまったのでした。自律型AIイロウルは今後も時々タカミ君に接触しつつネットの海で生き続け、今後はせっせとゼーレを解体します。(間でリエさんと組んで高階家の資産運用にいそしんでたりして…)

加持さんについて(未回収伏線その参)

 「すべて世は~」のあとがきで「王子様になりそこねた、ある御仁について」の項で書いたとおり、本来思わせぶりな立ち位置にいて、そこそこ美味しい場面だってあったはずの加持さん。ところが使徒連中の乱入で見事に影が薄くなってしまい、初期プロットにあったオイシイ場面もきれいに消滅したうえ、記憶が飛んでしまったカヲル君にはなかなか思い出してもらえないという非常に申し訳ない顛末となったのでした。
つくづく気の毒な御仁です。ゼーレとの仲介に立ったのだって一応カヲル君の立場を慮った結果なのに、カヲル君がゼーレと決裂した途端にかなり容赦無い扱いを受けています。カヲル君に余裕がなかったといえばそれまでなのですが、何とか助けになりたくても全く相手にして貰えないというのは酷い扱いと言うほかありませんでした。(<書いといて何を言う…)
しかし!言っちゃ何ですが加持さんはどう転んでも浮気相手なので、カヲル君達とずっと一緒に生きて行くというシナリオはしっくりこない。ただし、全く喧嘩別れというのも柳としては若干不本意でしたので、そこのところを回収するために書いたのがScene4 「Moving My Heart」だったのです。
カヲル君だって実は加持さんに気の毒なコトしたのかなぁとか思ってたんですから、『自分はまだ赦されていない』と感じている加持さんに、一度カヲル君とちゃんとお話をして欲しかったのでした。これも、前話ラストに盛るには構成上ムリがあったので割愛した部分です。
一応、つかず離れずカヲル君達を支えるひとり、という立場スタンス(何気にミサトさんとセット…)は確保した筈なのですが、書いてる内に話が膨らんでしまって加持さんは入院沙汰の怪我をすることになってしまいました。挙句ミサトさんにまんまと捕獲される仕儀を相成ったのですが…ま、お倖せに。

今回の黒幕その壱

 前回、トラブルを回避するために国外に居を移したはずの高階マサキ氏、流石に「ゼーレ並の年寄りが普通に臨床に出てるのは問題がある」とかいって新しい戸籍を偽造してさらっと帰国。皆からフツーに「サキ」って呼ばれてる段階で全然隠してないという話もあるのですが、高階夫妻の娘であるミサヲちゃんの孫という設定になってます。だからミサヲちゃんが「どーして私がお祖母ちゃん!?」と怒髪天なワケですが。
まあ、サキにしろミサヲちゃんにしろ今まで誰にも突っ込まれなかったから放置してただけで…1945年時点で17~18歳前後という偽造戸籍を作ってるわけですから、詳細に調べればすぐわかっちゃう。加持さんが高階氏を調べてたらすぐにとんでもない事実がでてきてしまったのはココです。日本中を転々としてたので意外とバレなかったんでしょうね。まあバレたらその時は…くらいのつもりで20~30年ぐらい前から準備してたらしいですが。
アーネスト・ユーリィ=高階というのが当面表向きの彼の名前になります。
Ernestというのは元来「正直者」という意味を持っていますが、柳はドイツ語読みしてエルンスト、のほうをNovel-1のキャラに使っています。こちらのErnestのほうがよっぽど原義に近い性格ですね。英語読みのアーネストも響きとしてはとっても好きでいつか使ってやろうと画策していました。ああ、しかしせっかくつけたのに誰もアーネストって呼んでくれなさそう…(涙)(<皆「サキ」とか「高階」だし)
実は柳、アーネスト=グレイン中佐が好きでした。(高貴な雰囲気のなのにアクションもこなすインテリ紳士。至極真面目、誠心誠意忠勤してるのに全く報われない辺りが涙を誘う…)う、ご存知の方がおられるだろうか(汗)(<お暇な向きは、『ツーリング・エクスプレス』『アーネスト・グレイン中佐』あたりで検索してみてください)

今回の黒幕その弐

 間違いなく今回の真の黒幕はこちら。他でもない、碇ユイ博士です。使徒連中からは「玉藻前」(=化け狐)と陰口をたたかれちゃいますが、レイちゃんとカヲル君を実子同様に思っているのは真実です。二人をこそこそ隠れる立場にしておきたくないという気持ちがありますので、不穏分子を纏めて始末してやろうと大活躍。挙句、強襲揚陸艦にヘリで乗り付けて舌先三寸で追っ払うんですから怖い御仁です。研究室に帰って「これで暫く静かになるわねっ」とか言いつつお茶してそう。
真希波マリちゃんはユイさんの身内で、形而上生物学部の事務を請け負っているちょっととっぽいけど実は切れ者(かも知れない)娘さんです。ちょい役には惜しい人材だなぁ。(<まだ何か書く気かコラ)

使徒連中について

 ええ、やりたい放題でございます。
伏線回収だけで話を書くのも肩が凝りますので、使徒連中に力一杯暴れてもらいました。書いてて楽しいヤツらですので、いくらでも話が膨らんでしまって困ったものです。勢いでショート何本か書けそうなくらい(<こら!)。
真面目一方のイサナは奇癖を暴露しちゃうし(何か明らかに前話と性格変わってしまったような(^^;)、ユカリちゃんは見かけ10歳中身はオバチャンだし、ミスズちゃんはちょっと危ないガンマニアっぽいし…数え上げるとキリがないくらい奇矯なヤツばかりになってしまいました。
ちなみにアウトドア派のタカヒロ君はロードバイクで70km/hくらいは出せるらしいです。巡航速度で。オービスに引っかかるぞ。

御礼申し上げます

 ここらで締めよう、と思う度に何やら書きたくなって未練たらしく続編書き続けるというのもあまりみっともよくない話です。しかし、書きたいものを気の赴くままにというのが現在柳の基本姿勢なので…のんびり寄り道しつつ、これからもいろんなお話が書いていきたいなと思っています。どれだけ書けるか、いつまで書けるかは天のみぞ知るところですが。
斯様にのんべんだらりなHPにお付き合いくださる方々に心より御礼申し上げます。
今後とも、のんびりおつきあいいただけると幸いです。

2017.12.17
※2018.8.27改訂版upload

――――――千柳亭春宵 拝
  1. これにて全編のお終い…とか言ってたら、冬になってからおまけ篇を書いてしまいました(「Snow Magic」2018.12.31upload)