久々の長編「てのひらの赤い月」ここに完結!
 「Angel’s Nestへようこそ」でスラップスティック・ホームドラマに興じつつ…そういえばシュミット大尉の話が中途半端だなーと思っていた矢先のことです。何だったかでEVA関係の検索をかけていたときに、「剣崎キョウヤ」という名前が出てきました。
 柳はまったくといっていいほどゲームはやらない人間なのでいままで全くノーマークだったのですが、2006年リリースの『シークレット オブ エヴァンゲリオン』というアドベンチャーゲームがあったのだそうです。そのオリジナルキャラクターとして登場したのが「剣崎キョウヤ」。
 主人公という割にビジュアルはぱっと目に黒メガネの胡散臭いおっさんですが、いろいろ調べていくと一枚だけ黒メガネしてないショットもあって、実はちょっと生真面目そうで優しげなにーさんだったというオチが。
 実直にそれほど派手なビジュアルの御仁ではありませんでしたが、何と第一次直上会戦で負傷して「使徒の一部」(!)を移植されたというバックグラウンドがあり、ルートによってはATフィールドを発動するやらEVAを遠隔操作するやら、えらい能力を付与されています。
 最終的にサキから「親の顔が見てみたい」といわれるほどよろしい性格になってしまいましたが、原作準拠なら自爆したサキの身体の一部が移植されてるわけだから…鏡見ろよって話になってしまいます。ただし、このお話『てのひらの赤い月』ではシュミット大尉が造った『核』の模造品フェイクを取り込んだことになっているので、言ってしまえばアダムの直系、真性の十七人目、今のところ最後に生まれた使徒ってことになりますね。

 元ネタ『シークレット オブ エヴァンゲリオン』では『剣崎キョウヤ』は加持さんと友人だったりするらしいのですが(しかも親友?)、そこに関してはまったくスルーすることになりました。しかし、「保安諜報部所属」で「セカンドインパクトで家族を喪った」というあたりはそのまんまです。

 あと、春先に「EVANGELION EXTREME」リリース!という記事に「おお、久々のEVA成分!」ととびつき、その中の新曲「赤き月」というのに触発されてタイトルが決定。

 そこから膨らみまして、気がついたら原稿用紙換算で200枚近いお話になってしまったのでした。時間経過的にはわりとコンパクトなお話なのですが、リエさん&クラッシャーコンビがタカミの支援で米国支部にカチコミかけるくだりをバッサリ切った割には…ボリュームは然程コンパクトにもなりませんでしたね。
 米国支部にはお気の毒な話になってしまいましたが、原作準拠ならS2機関の暴走で敷地ごと消滅しちゃってるんですから、地下抉られて崩落したくらい穏当なもんでしょう。

 それともう一つの柱として、今回はシュミット大尉とサキのお話でもあります。
 シュミット大尉としては、ネフィリム達を護るためであったとはいえ、サキにすべて丸投げして姿を消すことになってしまったのを負い目に思っているし、サキはサキでシュミット大尉がやむにやまれぬ事情で姿を消したことを理解しながら、何も言ってくれないまま一人がすべてを背負い込んで行ってしまったことが面白くない。だからこそ「振り払われた手に固執はしない」と言い切り「すべて世はこともなし」の前半はカヲルがアダムの現身であることをうすうす感づいていながらも不干渉を決め込んだ経緯があったのでした。(最終的には巻き込まれたもんだから肚を括ったんですが)

 サキは最初こそ拘りを棄てきれなかったのですが、「すべて世はー」ラストあたりで既にシュミット大尉自身はもういないし、カヲルはアダムの現身ではあっても完全に別人と結論づけています。むしろカヲルが不器用に生き方を模索してるのを、タカミ君のようにベタベタに甘やかすのではなくちょっと距離を置きつつ見守っている…というのがサキの基本的な立ち位置スタンスだったのですが、今回はカヲル君の方で南極の経緯と、シュミット大尉だった頃の自分がサキ(サッシャ)に負い目を持ってたコトを思い出してしまったのでした。
 サキとしては「お前はシュミット大尉じゃないし、俺はサッシャじゃないんだからもういい加減に気にするのやめろよ」的なことは何度か言っているのですが、思い出しちゃったものはしかたない。…だもんで、今回のカヲル君はかくもうだうだモードなのでした。
 今回の話でカヲル君的に決着がついたかとゆーと…まあ微妙ですかね。むしろサキの方がシュミット大尉に対する感情に整理がついちゃった感じです。

 今回やたら不幸に見舞われたタカミ君。実は初期プロットにおいてこれほどヒドい目にあう予定は全くありませんでした。
 晴れてリツコさんとは交際中ではあるものの、自分に何が出来るのかこれも不器用に模索を続けています。能力のコントロールも課題であることはよくわかっていて、そのためにいろいろチャレンジはするけど失敗もしてます。多分基本的に好奇心の強い気質タチなんでしょうね。「すべて世はこともなし」で『あの頃だって、そう従順な子供ではなかった』とか自分でも言ってますが…出来ると思ったらやらずにいられない、しかも懲りない。ある意味とことん科学者向けな性格と言うべきなのかも知れません。割と慎重居士のリツコさんとはいい釣り合いかも…というのは自画自賛というものでしょうか。でも柳としては、この二人には心から倖せになって欲しいのです。
(その割にはいぢめてるじゃないか、と言われそーだ…)

 さて、うだうだモードのカヲル君。
 一人で突っ走るのはよくない、と解っているから、とりあえず一人で南極の景色を見て頭を冷やしたあと、ちゃんと帰ってきてグレース剣崎のところへ行くときにはレイちゃんを伴う辺りは一応成長してるという証左ではないかと思います。余計なこと言ってレイちゃんを泣かせてしまい、盛大に慌てるというオマケはついてますが。
 ちなみにカヲル君はいつの間にかリエさんからどこ●もドアのやり方を習っているらしく、南極にはそれを使ったようです。まあ、あんなとこ普通の手段では行けませんからね。(シュミット大尉の時は出来てたようです。ドイツでサッシャを無理矢理地下壕へ転送したりしてますから)

 レイちゃんについて。
 カヲル君の苦悩を理解しつつ、まだ何にも力になれない自分が口惜しい。彼女もまた、自分に何が出来るかなぁって考えながら、カヲル君を信じて待ってます。健気ですね。もっと出番増やしたいです切実に。

 今回冒頭のみ登場のミサヲちゃん。欧州の古城と第3新東京を結構すいすいと移動しています。普通な手段で往来することもあれば、リエさんに頼んだりもしてるようです。留守番はイロウルでしょう。サキが自身の所在を明らかにするにあたり、一人住まいを始めているもんだから、不規則な独居生活ひとりぐらしをしているサキがちょっと心配で、ちょくちょく様子を見に行ってるようです。サキも時々スイッチ切らないといけませんしね。

 今回も相変わらず書きたいもの書いて、盛りたいもの盛っただけというワガママなお話にお付き合いいただいて、ありがとうございました。ここまで読んでくださった方々に、心よりの感謝を捧げます。

「千柳亭書房」も2019.6.1を以ておっと吃驚22周年。この小説「てのひらの赤い月」にかまけて看板の掛け替えしか出来てなかったというのは22周年にあるまじき言い訳ですが。細々と、あるいはのんびりまったり他の小説部屋も更新していきたいと思っています。画房のほうも。


 皆様、今後とも「千柳亭書房」をよろしくお願いいたします。

2019.8.3

千柳亭春宵 拝