篝火は消えない

海風の頌歌　あとがき

　クロエが書庫の前まで来たとき、そこはいつもと同じ薄闇と静寂を湛えていた。海風の頌歌　最終話

　その日の波は穏やかで、その季節としては暖かな陽光が水面に降り注いでいた。海風の頌歌　第7話

「……嵐になるな。船団が戻るには、もう数日かかるだろう」 　ソランジュは、暮色を深める曇天を仰いだアンリーの低い呟きを耳にして…薬湯の椀を下げる手を止めた。海風の頌歌　第6話

程なく、停戦調印のため国王レオンがエルセーニュを離れた。海風の頌歌　第5話

「…申し訳ありません。私などに関わったばかりに、大変な目にあわせてしまいました」 　細い径を先に降りながら、ぽつりとアンリーが言った。海風の頌歌　第4話

『…愛して…いるのか。審神官を』 　敬愛する寮頭の問いに、ソランジュは最初呼吸を停めるほどに驚き、そして今も戸惑い続けている――――。

　神童と言われ、かつては大神官の後嗣と目されたアンリー。 　弟ルイの幼馴染みでもあったから、クロエは彼を幼少の頃から識っていた。海風の頌歌　第2話

典薬寮頭補佐・ソランジュには、通常の業務の他に上司から命ぜられた任務があった。海風の頌歌　第1話