お泊まりするのこと

立つのこと

 6月後半に入って、みっちゃんがやおら立ち始めた。…無論まだつかまり立ちではあるが、つい半月ばかり前にようやくまともに這い始めたというのに、勢いがついたか早いものである。
 視点の変化が面白いのだろう、とにかく掴めるものは何でも掴んで立ち上がる。まだかなりお尻がぐらぐらしているが、本人はいたくご満悦である。視点の変化に伴い探索範囲も広がり、棚の上だからといって安穏とはしていられない。おまけにいっちょまえに自己主張なぞしはじめたので、一旦手に入れたものを危ないからといって取り上げるとおそろしく不機嫌になるから厄介だ。…もっとも、完璧に安全なものなぞありえないのだから、危険を回避できるところまで静観というのが正解なのかもしれない。

お泊りするのこと

 来月(8月)2日を以ってみっちゃんは満1歳になるわけだが、その前祝の意味もあって家族三人で一泊旅行をすることになった。目指すは海ノ中道マリンワールド。その気になれば日帰り圏内ではあるのだが、赤ちゃん連れで強行軍はよろしくあるまいということになってあえて一泊することとした。
 生後すぐに黄疸で再入院したのを除けば、みっちゃんにとっては初めてのお泊りである。
 折角北九州まで行くのなら、久々にスペースワールド1へ覗いてみるのも悪くない。昨今、0歳児でも利用可能な施設もあるらしいと聞いて、宿はスペースワールドのそばに取った。
 乗ったアトラクションといえば観覧車と惑星アクアくらいのものだったが、アクアでは係員さんにえらく怪訝な顔をされた。(<しかしオフィシャルサイトには乗れると書いてあった!)
 祝日・連休・夏休みという混雑のお膳立てがそろっているはずのスペースワールドは、どういう加減かガラガラだった。お昼も食べて、さてお土産でも見繕うかねという時間になってようやく混雑が始まったのを見て、朝イチで乗り込んだのは正解だったと旦那と二人で頷きあったものである。
 で、主役のみっちゃんはといえば…
 観覧車の中で乳を要求し(<飲食禁止のアナウンスに思わず苦笑)、惑星アクアではきゃあともみゃぁともいわず柳に掴まっていたのだが、ベビーカーで揺られている間に眠くなったらしく、お昼を食べに入った時には見事爆沈。「みっちゃん、ごはんだよー、なくなっちゃうよー」と起こしても、口許にきらりと涎を光らせて反応なし。ようやくデザートになって目を覚まし、かろうじてアイスクリームを食べた。夕食で入ったファミリーレストランでも寝倒しそうな勢いだったので、流石にまずいと起こしたところ、大変なご立腹で宥めるのが一苦労であった。
 ゆめ、旅先とはいえ大人のペースで物事を考えてはいけない。わかっていたつもりだったのだが、なかなか思うほどにスケジュールが組めないものである。

 それはさておき、宿の話。旅行まで2週間を切った時点で予約が取れた奇跡を有難がっていた柳であるが、ひとつだけとんでもない誤算をしていた。ライトアップされたスペースワールドが見渡せるなかなかいい部屋だったのが、惜しむらくは洋室だったのである。洋室が何故まずいか?そこに柳は入るまで気がつかなかったのである。…つまり。

みっちゃんは、ベッドの上だけでじっとしてなんぞいられない!

 洋室の床はつまるところ土足である。いかにきれいに見えたところで、這いまわったりごろごろしたりするのが適当な場所ではないのだ。みっちゃんが這い始めるまえなら洋室でもよかったのだが、這う、転がる、立ち上がるetc.…動くのが面白くてたまらないお年頃のみっちゃんに、ベッドかソファの上だけで我慢しろというのはどだい無茶な要求なのである。今度宿を取るとしたら絶対に和室だ、と心に誓った柳であった。

 結局、昼間寝倒したみっちゃんは夜中に元気凛々、夜中の一時前まで大活躍であったのだが、そのあたりの悪戦苦闘については省略。

 翌朝はホテルのレストランでバイキング。選べることの便利さをとことん堪能させていただいた朝食であった。みっちゃんは夜中の大活躍はいつのこととばかりに元気いっぱいで、お子様メニューのホットケーキやスクランブルドエッグでご満悦であった。持参したマグでオレンジジュースも飲んで、エネルギー充填120%!のところで、本来の目的地である海ノ中道マリンワールドへ突撃した次第である。


 昨今の公共施設には、赤ちゃん連れでも不自由がないように授乳室・オムツ替えスペースがきちんととってある。実際に赤ちゃん連れで動いてみないとこの有難味はわからないものだ。マリンワールドにも授乳やオムツ替えの部屋が用意されていただけでなく、車椅子・ベビーカーでも観覧に不自由がないように順路が設定されており、柳はいたく感動した。しかし肝心のみっちゃんは、アーチ状の水槽(<つまり、魚が泳ぐ姿を下から見上げる)には多分に興味を示したものの、普通の水槽にはTVと同じ程度の反応しか示さなかった(笑) イルカショーに至っては、(戸外のため)暑いと焦れ出す始末である。まあ、致し方あるまい。

 以上が「みっちゃん初めてのお泊り」の顛末である。面白かったのは、旅行中幾度か雨がぱらついたり、時に雷雨にさえなったのに、みっちゃんの移動中はどういうわけか雨が待ってくれたことである。みっちゃんがチャイルドシートにおさまるのを待っていたように、雨がぱらつきだす。車に乗っている間に結構降っていても、みっちゃんが降りる頃には殆ど止んでいた。どうやらみっちゃん、晴れ男2のようである。

  1. スペースワールド…2018年1月1日、惜しまれつつ閉園
  2. 末っ子のんのんは兄ちゃんに輪を掛けた晴れ女でした…。