たっくんの視線

 離乳開始時期は4~5ヶ月と言われ、3ヶ月半のたっくんにはまだ少し早い。だが、食事のときにたっくんを傍に寝かせておくと、起こしてくれと言わんばかりにじたばたし、起こせば起こしたで家族の箸先を食い入るように見つめている。しかも口許に涎を一杯溜めてもぐもぐされた日には、こちらとしても食べにくくてしょうがない。
 確か前にもこんな展開があったよなぁ、と月並みな感慨に浸りつつ、離乳準備というよりたっくんを宥めるためになにがしかを与えてみることにした。なにせ、たっくんを宥めつつみっちゃんの食事の世話もしなければならないので、食卓は忙しいことこの上ない。一寸でもたっくんの気が逸れてくれれば御の字である。
 第一選択としては、やはりみかんである。袋の端をわずかに破って直接吸わせてみたり、スプーンで潰してしみ出た果汁を掬って含ませたりしている。量はわずかなものだが、とりあえずたっくんを宥めるには有効であった。無添加野菜ジュースも試してみたが、反応はまずまずといったところか。涎と一緒にこぼれたりもしているが、顔をしかめもせず、味を確かめるかのようにもぐもぐやっているからには、さしあたってイヤではなかったのだろう。

 みっちゃんはといえば、少しずつ野菜も食べてくれるようになった。相変わらず納豆と牛乳がなければ食事が始まらないのだが、食べる物の種類が増えてきたので一安心である。まあ、欲を言えば「たっくん、泡ぶくぶくー!(<涎のこと)」などと余計なツッコミを入れる暇があったら自分のお茶碗のほうへ集中してほしいのだが(<集中している間は自分でご飯を食べられるが、逸れはじめると手伝わざるを得ない)。・・・どうにも注意が転動しやすいみっちゃんであった。

お風呂騒動

 年明けごろから、たっくんはベビーバスを卒業した。
 みっちゃんの時より大幅に遅くなったのは(<みっちゃんは1月半程度で卒業している)、入れる側が服を脱がなくてもいいという理由による。みっちゃんの時は母と常時2人体制(入れる役と、服を着せてやる役)で入れていたのだが、冬場で寒さも厳しくなってきた昨今、日が落ちる(気温が下がる)前に入れてしまおうということで、母の帰宅を待たず柳一人で服を着たまま2人を順番に入れていた。
 しかし、室内とはいえノースリーブシャツと五分丈スパッツで右往左往するのははっきり言って寒い。たっくんも身長が伸び、ベビーバスではもはや手狭にすらなってしまった。もはやこれまで、と観念した柳は祖母(みっちゃん&たっくんからすれば曾祖母)に泣きつく。
 かくて、柳が先に入り、祖母がたっくんとみっちゃんの着替えと搬送(<みっちゃんの場合は、脱がしさえすれば自分でどかどかと入ってくるのだが)をするという体制が確立した。タイミングがずれて、柳がたっくんの背中を洗っている最中にみっちゃんが乱入、水位の上がった湯船でたっくんがお湯を飲むというアクシデントもあるにはあったが、概ね順調である。頭痛を催すほどの寒さから一転、連日茹っている柳であるが、核家族家庭で複数のお子さんを入浴させているママさん方の苦労を思えば贅沢な話である。嗚呼、元気なばあちゃんの有難き哉。

050116

にいちゃんはつらいよ

 柳がたっくんの世話にかかりきりになることが多いため、みっちゃんはいきおいばあちゃんズのもとで過ごす時間が長くなる。それでも思い出したようにぱたぱたこっちの棟へ渡ってくるのだが、時にはたっくんを抱っこしたがることもあり、泣いていればそれなりに気にかかるようだ。

 先日のこと、たっくんの眠った隙を見計らって柳が洗濯物を干しに出たところ、家に入ろうとしたらみっちゃんの泣き声が聞こえてきた。「かあちゃ~ん!」と泣いているからにはただのじらで泣いているのではあるまい。慌てて声のする方を探して回ったが、どこにも見えない。どうやらたっくんの居る部屋だと気づいて上がってみると、たっくんの布団の横で座り込んで泣いていた。・・・状況と、みっちゃんの説明を総合すると、どうやら例によってたっくんの部屋を覗きに来てみると、たっくんが泣いていたらしい。それで台所まで降りて柳を探したのだが、外へ出ていた柳は当然いない。それですっかり泡をくって、どうしていいか分からずに泣き出してしまったもののようである。まあ、ちなみに当のたっくんは兄ちゃんの泣き声にびっくりしてか泣くのを止めていたのだが。

 みっちゃんはみっちゃんなりに、たっくんがまだ自分の意思で動けないことを理解しているのかもしれない。惜しむらくはみっちゃんとてまだまだ小さいので、面倒をみてやるところまでは無理なのだ。さしあたっては、みっちゃんの努力を褒めてあげるべきだろう。なかなか可愛い兄ちゃんっぷりである。

041220