「男の子は病気をしやすいから大変よぉ~」などと先達は脅かしてくれるが、みっちゃんは突発性発疹と水疱瘡、いわゆる通過儀礼に近いモノはやらかしても不明熱(原因がよくわからない熱)のようなものはあまりなかった。やんちゃだがそういうあたりは親孝行だと親莫迦な自慢ができていたのも、所詮は感染源との接触が少なかった所為らしい。
手始めは、まあ季節の変わり目にはありがちな風邪である。今迄はこれくらいなら受診するまでもなく治ることもあったのだが、折悪しく入園式直前。咳も出ることだしとりあえず受診した。薬を頂いたのはいいが、去年水疱瘡をやらかした際、抗ウイルス剤を飲ませるのに往生した記憶に頭を抱えることになる。
とにかく飲ませるしかない、と腹を括って粉薬を小皿にあけて数滴の水で練る。去年はこれを有無を言わさず頬の内側に塗ったのである(<短時間で勝負がつくし、必ずいくばくかは飲み込む。母上直伝の技)が、今度の薬はピンク色でほんのり苺に似た香りがする。
「ほらみっちゃん、イチゴ味。コンコンが楽になるよ~?」
これぐらいで飲んでくれたら世話はない!と思いつつ勧めてみると、素直に口をあけた。大好きな牛乳で押し込んだ格好だが、何とか自分から飲んでくれたのである。成長したな、みっちゃん!と相変わらず親莫迦街道驀進中な感慨を抱いた柳だが、冒頭に書いたようにあくまでも手始めでしかなかった。
無事に(<力いっぱい語弊があるのだが、このことについてはまた項をあらためよう)入園式を済ませたみっちゃんだが、数日後、おそろしいことを呟いた。
「左の耳が聞こえない!」
発熱の後である。中耳炎を疑って(<柳も既往がある)耳鼻科を受診したが、そこまではいっていなかったようだ。耳垢を少し取ってもらって後、訴えはなくなった。・・・診察でかなり怖い思いをしたようなので、調子が悪くても言わないのではないかと心配したが、その後聞こえのテストをしてみたところ問題なし。これについては決着した。
しかしその数日後のある日、そろそろお迎えの時間という頃になって保育園から電話がかかった。嘔吐と下痢である。迎えに行ってみると笑いながら走ってきたものの、結局その日から嘔吐でまともに物が食べられなくなり、またまた受診と相成った。
お腹にくる風邪、という診断で、嘔吐止めや整腸剤を処方してもらうことになる。当然保育園はしばらくお休み。悪いことには柳自身もその風邪を貰ってしまい、ボロボロの状態であった。
結局、みっちゃんの風邪は家中に蔓延し、4月後半から5月上旬にかけて、家中病人だらけというていたらくになった。この農繁期まっさかりに大変なことになったものだ。げにおそろしきは子供の風邪である。人の集まる所は往々にして病原菌の巣窟なのだが(<特定の場所を悪く言うつもりはない。これについては自衛が基本である。念のため)ここまで強烈とは思わなかった。柳自身にも油断があったことは否めない。
「外から帰ったら、うがいと手洗い!」
抗菌グッズで武装するより、これが一番なのである。
050507