停電にはしゃぐのこと

 9月7日1、台風18号が当地を襲った。
 その昔の19号台風2で柳がエラい目に遭ったという話は別項3に譲るとして、今回の18号も風速50m/secという冗談のような暴風でうちの栗や杉、藤棚を薙倒して行ったが、幸い家屋に被害はなかった。古くは築100年、新しくは築3年という物凄い開きのある我が家だが(要するに建て増しに建て増しを重ねている)、古い母屋に至るまで奇跡的に無事であった。無事じゃなかったのは電気のほうである。午後4時ごろに停電し、回復したのは9日の午前零時を回ってから。19号台風の時には2週間近く電気の恩威から見放されても生き延びた柳だが、今度は子連れの身重である。時期的にはそろそろ産気づいたとしても不思議ではないだけに、正直不安でしょうがなかった。

 しかし。不安どころか状況をすっかり楽しんでいたのがみっちゃんである。
 大好きなアイスクリームが溶けてしまって食べられなかったのは不満らしかったが、蝋燭をつけての生活にすっかりはしゃいで元気一杯であった。時に「電気つける」「テレビ見る」「アテネオリンピック見る」と言い出し、できないとわかると多少焦れたが、すぐに気が移って遊びはじめる。電気の供給が止まってポンプが動かず、水の問題がじわじわと押し寄せていたのだが(当座は太陽熱温水器に上がっていた水が使えた)、みっちゃんの元気を見ていると「・・・ま、どうにかなるだろう」という気になったものである。

 旦那が発電機を借りてきた時など、日はとっぷり暮れているというのに大はしゃぎで外へ飛び出し踊りまわった(発電機の音が珍しかったのだろう)。いきなり姿が消えたので大人たちは青くなったが、みっちゃんとしてはパパが帰ってきたのでお迎えに出たらしい。・・・つくづく、元気なことである。
 復旧して2、3日は工事の影響か短時間停電することもあったが、現在は安心してパソコンを起動していられる状態である(いっぺん起動途中に停電して青くなったことがある)。柳の腹のほうも大過なく、臨月に入るまで持ち堪えることができた。・・・暑くもなし寒くもない今のうちに、そろそろ出てきてくれてもいいのだが・・・。

  1. 2004年9月7日
  2. 2019のアレではなく、1991年(平成3年)9月に西日本~東北~北海道を襲った凶悪な台風。東北では収穫前の林檎が甚大な被害を被ったとかで別名をリンゴ台風とも。柳は当時長崎在住でした。直撃を喰らったアパートは屋根を剥ぎとられ、行くあてとてない柳はそのまま二週間近くを屋根のないアパートの中でブルーシートのテントを吊って生活したのでした。
  3. 凄まじくも人の情けが身に沁みた貴重な体験をまとめた寝言拡大版「台風が来たぞーっ!!」(’99)。