「これ、何だと思う?」
旦那が差し出したのは真冬の屋外作業用ジャンバー。袖口辺りに何か硬いモノが触れます。
「ボタン?」
とはいったものの、よくよく感触を確かめると何だか場所が変だし厚みが違う。しかも、何だか馴染みのある形態なのです。表地は硬いし、裏地との間にはしっかり綿が仕込んであるのですが、すぐにわかりました。
「…指ぬき?」
縫製中に混入したまま出荷されてしまったというオチと思われますが、何が笑えるってどっちかというと旦那がそれを10年間気づかずに着てたっていう事実でしょうな。まあ、実際には肩口あたりでひっかかってたものが何かのはずみでとれ、袖口までおちてきて初めて気づいたというところでしょう。屋外作業用ジャンバーで寝っ転がる事はナイでしょうし、よほど特殊な状況でないと気づけなかったと思われます。
ともかくも、袖口の辺り、裏地の縫い目を解いてぐりぐりと探った結果、ブツがでてきましたよ。
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出てきたブツ。
完全無欠に裁縫用の指ぬきです。中綿と一緒に何度も洗濯されてるもんだから、新品同様のピカピカです。
笑うしかない状況ってこれですな。
ともかくも解いた裏地の縫い目を補修して、一件落着。旦那に「……要る?」って訊いてみたら、「使わないからあげる」といわれたので、この指ぬきは柳の所有物となりました。
異物混入事件といいますと、イロイロ物騒な話 1もあるのですが…まあ、長閑な莫迦話で済んで重畳というところ。
なんだか、ドラマに仕立てられそうだなとか考えてしまうのは物書きの度し難い習性というモノですね。これが名入りの結婚指輪とかだったらなんとかお返しする術を考えにゃならんとこでしたが、どシンプルに指ぬきでしたので、ジャンバーの値段分として有難く使わせていただくこととしました。
どっとはらい。