Osaka紀行2020

 世間はコロナで上へ下への大騒ぎのところ…大阪へ行ってきました。
 物見遊山に行った訳ではなくて(<嘘つけ!)、ぶっちゃけコロナが怖くて仕事になるか!というのが柳の本業しごとでございまして1、当然研修だってちゃんと開催されるんです(開催形態は世間様を憚ってか相応の配慮がされてましたが)。
 肝要なのはただ怖がるんじゃなくて標準予防策スタンダードプリコーションってね。
 調べてみると一時問題になったSARS (重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome) )もMARS (Middle East Respiratory Syndrome)もコロナウィルスの一種なんです。結局…あの時は大山鳴動して鼠一匹、って感じでしたが。エンベロープ2を持つってことはインフルエンザ同様アルコール消毒も有効ってことですよね。

 寝言拡大版のカテゴリもつくったことだし、ここはひとつ記憶が新鮮なうちにプチ旅行記なぞ、と思い立ちました。ご用とお急ぎのない方のみ、ご笑覧くださいませ。

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空中庭園!

 研修おしごとのことはさておき、完全自費3の研修なんて終わったらプライベートタイムです。
 しかし昨今はGoogle先生のお蔭でまったく未知の街だって怖くない。研修地の近くで見晴らしがよさそーで夕方から夜になっても遊べるとこってどこかな?と探したら、ありましたよ。梅田スカイビル空中庭園。

 前回の東京タワーといい、そろそろ「おまえ高いとこ好きだろ4」と言われるんじゃないかと思うのですが、まあ有り体にいえばそのとおり。柳は見晴らしのいい夜景ってやつが大好きでして、技術もないのに必死こいて写真撮りまくりました。それがこの一枚という次第です。

Osaka202002

梅田スカイビル空中庭園からの一枚。昼間の雨が上がったあとの雲の流れもまたよし。

 実は研修が終わってすぐに飛び出したものの、スカイビルにたどり着くまでに梅田駅ダンジョン(<田舎者の柳にとってアレはまさに迷宮ダンジョンというに相応しい…)で30分近くロス5。しかし辛うじてトワイライトタイムに間に合いました。いやあ眼福眼福。
 梅田スカイビルというのはツインタワーで、二つのビルの間に空中回廊が渡してあるという…柳としてはドはまりな舞台でして、とりあえず建物にうっとり見入ってしまいました。まるでいまから宇宙船にでも搭乗しますぜ、という風情のエスカレーター(しかもシースルー)にもわくわくしましたし、展望フロアはもとより屋上スカイウォークの風なんて絶品でございました。
 ただ高けりゃいいってものでもありませんが、地上高173メートルというからシーサイドトップ(152m)より高いのですね6。なんたって外に出られるってのがいいです。まあ、2月ですから風はそれなりに冷たかったですが(笑)。7

天空美術館

 スカイビルの27階には絹谷幸二天空美術館というところがありまして、そちらへも行ってきました。フレスコ画(イタリアだと、アフレスコという言い方になるようです)を描かれる方のようですね。

 フレスコ画というと古い寺院や教会、お城なんかへいくとお目にかかれる漆喰に描いた絵ですが、それでいくと建築物に描かれたものは一切動かせない。しかしまあ、考えるひとはあるもので、ストラッポといってフレスコ画の表面に接着剤を塗って壁ごと剥がし、別の下地に張り替えたあとその接着剤を溶かし去るという技術があるんだそうです。そうすれば建造物自体は傷みがひどすぎて保存が困難でも、画は保存できるという次第。そうやって保存された画も展示がありました(アフレスコ・ストラッポ)。

 ほかにもミクストメディアと説明してある展示があって(見た目、フレスコ画と似てるんです)これはいったい何で描かれてるんであろう、とスタッフのお姉さんに聞いてみたら…「地はキャンバスですが、絵の具として様々な素材を使っています」とのこと。例えばどんなの?とツッコんでみたいところだったのですが、画材というのは画家さんのいわば企業秘密的な部分があって教えたがらない…という話を以前聞いたことがあるのでやめました。…実直に、スタッフのお姉さんも知らないっぽかったしなぁ8。辞書的な意味として調べてみると、ミクストメディアというのは「性質や種類の異なる複数の媒体または素材を用いる技法」だそうな。要するに何でもアリってことですね。…って、いいのかそんな括りで。

やっぱり…

 翌日、新幹線を敢えて夕方の便にして、大坂見物してきました。
 そうはいってもユニバーサルでも天王寺動物園でも海遊館でもなく、のん9にさえ「やっぱり…」とツッコまれましたが大阪城&大阪歴史博物館で歴史三昧してきました。この二カ所はセット券もあるし隣接なので柳のような時間にも財布にも余裕のない旅行者にはとってもお得です。宿から歩いて行けた、というのも大きい10
 天王寺と海遊館はチビ連れでないと面白くなさそうですしね。

大阪城あれこれ

 大阪城といえば太閤さんの城、というイメージですが…現在建ってる天守閣は昭和になって再建された、しかも大坂夏の陣の後に徳川によって場所さえ移して建てられた大阪城の姿なのですね。そこら辺が懇切丁寧に展示で示されていて、とても勉強になりました。模型好きののんが涙流して喜びそうなジオラマが盛りだくさんで見応え十分でした。

大阪城天守閣

青い空に映える威容

 考えてみりゃそーですよね。夏の陣で大阪城って炎上した筈です。

 大坂夏の陣の様子を描いた屏風絵の詳細な解説もあったのですが、それには合戦だけじゃなく戦禍に苦しめられる庶民の姿も描かれています。華々しい合戦だけでなく、戦争の実相というものを冷静に描いてる感がありました。あれは一見の価値ありです。…生々しすぎて胃にもたれますが。

 その後、出来たばっかりの徳川幕府が忠誠心を測るかのように石垣の工事をびっちりと全国の大名に割り振ったもんだから、大名は自分とこの印を付けた巨石を争うようにして持ち込んだんだそうです。だから今でも石垣に印が残っている。小豆島あたりで切り出して、船で運んだようですね。いまでも小豆島には切り出したはいいけど運ばれなかった石があるとかないとか。
 しかしそうやって土台からガッツリ再建した徳川の大阪城も、半世紀と経たないうちに落雷で天守閣は焼失したんだそうです11。まあ、天守閣なんてなくったって幕府の軍事拠点としての機能は十分に果たしたらしいのですが。(大塩平八郎の乱とか長州征伐。ただし、戊辰戦争では総大将がさっさと撤退したのであっさり落城している…)

やっぱり虎

大阪城内に展示してあった天守閣の壁を飾る虎のレプリカ。茶室といい…太閤さん、つくづく好きですね、金色。

 結構マメに展示替えがあるようです。柳が行ったときには、手紙から読み取れる秀吉とその家族、といったテーマの展示でした。誰でも知ってるサクセスストーリー、豊臣秀吉。しかし他の大名連中と違って譜代の家臣ってものがいなくて、それだけに身内(親きょうだい)を大事にしたようです。小田原攻めの時のねね(最初の奥さん、正妻)への手紙なんかは微笑ましいくらい。

 その割には秀吉、側室をごっそり抱えてました。死因は腎虚12じゃないかとさえ言われるくらいお盛んだったのは有名な話。しかもええとこのお嬢ばっかりというのがなにやら薄暗いこだわりめいたものを感じさせるようで柳からするとどうにも件の手紙にしたって感動半減ですね。

 結局後嗣に恵まれずにあちこちから養子を貰ったりするのですが13、しかしいざ実子が生まれるとあっさり掌を返してしまうから14、いくら死に際になって秀頼のことを「かえすがえすもおたの申す」ってまわりに言ってもあんまり響かないでしょう。

豊国神社

兵どもが夢の跡。
なにわのことも夢のまた夢だそーですが、どんな夢を見ておられたやら。

 大阪城の真ん前には豊国神社があります。御祭神は勿論というか豊臣秀吉。平成に入って建立されたという、よく見るお顔の秀吉公像がありました。

 太閤秀吉の生涯がドラマティックなものであったことについて異論はありませんが、身内にしてみりゃ「どっか遠くで幸せになってくれ、関わりたくない」御仁であった可能性も…ありますよね。

大阪歴史博物館のロケーションについて

 さて、大阪歴史博物館!
 NHK大阪のおとなり15、ドームで繋がった造りの木の葉型のビルは船をイメージしてるんだそうで。NHKの建物は帆なんですと。なぜなら大阪は水の都!ってのがコンセプトにあるらしいです。
 コロナ騒動でイベント系のものが一切中止になってるせいか空いてまして、じっくりたっぷり堪能できました。
 かつての難波宮、その一部があった場所の上に建ってるそうで、地下ではその遺構が保存・研究中なのだとか。一階エントランスの一部が透明な床になっていて、それを見ることが出来ます。遺跡探訪ツアーは残念ながら前述の通り中止でしたがね。

難波宮

 大阪城に眼を奪われてすっかり忘れていましたが、大坂といえばその昔、都があったのですね。難波宮。乙巳の変で退位した皇極天皇の後を受けて登極した孝徳天皇の都です。まさに世は大化の改新!まあ、表舞台にいたのは中大兄皇子だの中臣鎌足で、孝徳天皇は皇位にありながら皆がどんどん離れていって大変不遇のうちに崩御されたようです。その息子が有間皇子。自身が中大兄皇子から危険視されていることを知っていて、あの手この手で躱そうとするのですが終に謀反の疑いで処刑されるという悲劇の王子サマ。16
 戦国末期に負けず劣らずドラマティックな時代なのでした。

天下の台所…の前に

 大坂と言えば天下の台所…になるまえに、信長とさえ喧嘩した本願寺が中心にいた時代があったというのを今回改めて知りました。その辺をガッツリ見聞しながら進んでいたら17、うっかり昼ご飯を忘れてまして…ついでに朝イチから5時間近く歩き通しだったんで足腰にきてしまいました(<歳ですな、言いたかありませんが)。
 だもんで、情けないことにそこから後が若干駆け足になってしまいました。勿体ないことをしたもんです。18
 また行きたいですね。

新幹線に関する雑談

 新大阪駅も品川や東京といい勝負のダンジョンでしたが、何に疲れたって座るところがない。仕方ないので構内のカフェに入ってケーキセットでティータイムしてました。(前述のように朝から気合い入れて歩き回りすぎて夕刻はすでにクタクタ…)
 出てきたケーキセットなのですが…アイスクリームは溶けかけてる、ガトーショコラは甘すぎる…うーん仕方ないこれも疲れた脚を癒やすためと思って有り難く頂きましたが…初めて見ましたよ、勘定にチャージ料の入るカフェなんて。さすが大坂というべきなのか、昨今の駅ナカ事情がなべてそうなのか…

 まあ、次はもうちょっとゆっくり難波宮を見て歩くことにいたしましょう。
 寝言にお付き合いいただいてありがとうございました。

  1. ちょっと言葉面が乱暴なようですが、ぶっちゃけそんなもんです。新型インフルだろうが、コロナ、SARS、MARSだろうが、やらなきゃならんもんはやらなきゃならん。柳はそっちについて決して専門家というわけではありませんが。
  2. エンベロープ…ウイルスの表面を覆う構造で、概ね脂質から成るためエタノール、有機溶媒、石けんで容易に破壊できる。
  3. 自己研鑽、といえば聞こえは良うゴザイマスが、なんてブラックな職場…まあ、言いたかありませんが医療職場なんてそんなもんです。
  4. 莫迦と煙は高いところが好きだそうな…まあ、否定はしませんよ(笑)
  5. GPSがちゃんと機能しなかったのです。地図に示される地図と、目の前の景色が違う…こりゃ怖い。
  6. シーサイドトップ…東京は浜松町、貿易センタービルの展望台。 あそこはあそこで遠景の東京タワーが素敵です。
  7. 風が冷たいといえば、以前長崎・稲佐山の展望台に上がったときの風は凶悪でして、手がかじかんでカメラ取り落としそうになるほど寒かったです。あれに比べりゃスカイビルの屋上なんてあったかいもんでした。ちなみに稲佐山は標高333mだそうな。東京タワーのてっぺん並みですね。
  8. その昔、ある王妃様の肖像を描くよう命じられた画家が王妃の素晴らしい肌の色を表現するのに悩んだ挙げ句自分の血を混ぜてたとかいう伝説を聞いたことがあります。決してそこまでおどろおどろしい話を期待してたわけじゃないんですが…古来、画家さんという人種は自分の想いを表現するために材料一つにも命かけてたという話。まあ、そんなとこにもストーリィを期待してしまうのは物書きの度し難い性癖というべきなんでしょうね。 
  9. のん…今更ですがうちの末っ子。料理好き工作好きな12歳。後述しますがジオラマ大好き。
  10. マトモに歩くと30分前後かかります。足腰に自信のある方のみ、ということで。柳は単に無謀なだけです。あとでしっかりツケを払わされました。
  11. 結局、昭和6年に再建された現在の姿が豊臣大阪城、徳川大阪城を越えて記録更新中とか。
  12. 漢方の病名。心労・房事過多などによる強度の心身衰弱症。
  13. 無論、政略的な理由で養子にしたと思われるのも沢山います。信長の息子とか、家康の息子とか。
  14. 甥の秀次に至っては、養子にして関白の位まで譲りながら、素行が悪いってんで切腹、妻妾子供に至るまで皆殺し。甥ですよ甥!紛れもなく自分の血縁だってぇのに惨い話です。
  15. ちなみに通りのお向かいは大阪府警本部。服部平次クンのおとーさんがいるところですね。(府警本部、といってもピンとこなかったらしいのんに、そう説明したらえらくウケました…)その通りを、真っ昼間から明らかに整備不良のバイクが爆音を立てて通り過ぎていきました。どうでもいいですが舐められてませんか大阪府警。 
  16. 小説やコミックで結構とりあげられているのでご存じの方も多いはず。
  17. 音声ガイド、借りました。時々、吃驚するようなビックネームの声優さんがいるという噂に惑わされた訳ではなく、本当にちゃんと説明が聞きたかっただけなんで
  18. 外には復元された倉庫もあったらしいのですが、見逃してしまいました。遺跡探訪ツアーも行ってみたかったなぁ…