
「篝火は消えない」から。アリエルが最期に見た空。陽光は消え失せ、世界が闇に沈む。止める術は、もうない。

『願わくば私が、詔書を紙屑にしないように…振る舞えるといいのだけれど』
王太子アリエルは、その言葉を完璧に成就させた。
陽光消ゆ。蝕ならば数刻で光は戻るが、もはやこの陽は復することはない。この国は、この危急存亡の秋に…聡明な次代王を喪ってしまった。
外套の敷かれた机…そこについた両手を握りしめたことで、外套が吸った緋色が指の間から滲み出す。それを身の置き所がない無力感ととともに眺めながら、アレクセイは絞り出すように言った。「…殿下、かくも細やかな配慮をなさる方でしたのに。今度ばかりは…何とも…何ともご短慮であられましたなぁ…」
リライト板「篝火は消えない」第3話「陽光消ゆ」