シンエヴァ観ました! おかわり

 二回目、行ってきました。
 すこし消化出来た気がします。Fun Fictionへ繋げられるかどうかはまだ未知数ですが、とりあえずまとめてみようと思います。今更ではありますが、一応注意書きをば。

警告

ネタバレ注意
重度使徒バイアスあり(今更)

千柳亭春宵

レイちゃんの田植え姿が可愛かったです…
「稲刈り、したかった」という台詞が泣かせます。

[toc]

リツコさん、銃口震えてます

 ヴンダーに外道親父が単身乗り込んできて初号機を強奪していったくだり。
 全く躊躇無く外道親父の脳天に向かって全弾撃ち尽くす勢いで引き金を引き続けたリツコさん。やー、容赦ないなぁと柳としては溜飲を下げたという話は前回書きました。しかし、よくよく観ていると…撃ち尽くしたあとのリツコさんの銃口って微妙に震えているのですね。
 リツコさんはやっぱり、殺すつもりで撃ったと思います。殺しきれるかどうかは別としても、そうすべきだと判断して。でもそれを実行するには、自分の中で何かを噛み潰さなければならなかったのでしょう。裏切られたとはいえ、かつては信じてついて行ってたんでしょうから。
 うーむ不幸。やっぱり涙の通り道にある黒子ほくろのジンクス1は健在なのでしょうか。
 おまけに、何に腹が立ったって…外道親父の台詞です。
 「葛城君には世界が、赤木君にはしあわせのかたちがみえていない」などと…よりによってテメエに言われたかないわこのくそ親父!ええい、誰の所為だと思ってるんだ! …と、脳味噌はみ出た頭にバケツ一杯分ぐらい水ぶっかけてやりたい気がしました。

 嗚呼、誰か、リツコさんを幸せにしてあげてください。お願い…(涙)
 やっぱり旧劇に戻ってしまいました…柳としては リツコさんに幸せになってほしかったのですよ。かつてはこれが「読みたきゃ探せ、無けりゃ書け」のFun Fiction原則にのっとり、結局柳の中で第11使徒に絡む捏造に結びついていったのでした。2しかしこの世界線だと、このお話が終わった後ってリツコさんにはヴンダーの生存クルーをまとめていくという重責がのしかかっていくわけですよね。リツコさんならやり遂げると思いますが、誰か支えてあげてくれないかなぁ。

ヴィレの成立時期?

 「空白の14年間」とは言いますが、「Q」のラストで起きた天変地異が「ニアサードインパクト」で、そのあとホンモノ(?)の「サードインパクト」が起きて地面がコア化し大多数の人類がみんな真っ赤なエヴァもどきになってしまうまで…長く見積もっても1年程度しか経過していない筈ですね。
 加持さんがお亡くなりになった時、ミサトさんのお腹にいた子供が今年14歳ってことらしいですから。

 この一年間がおそろしくめまぐるしい。

 まず、ヴィレ成立。ひょっとしたらニアサードインパクトの時点で既に水面下では動いていて、マリちゃんとか加持さんはずっとその立場で動いていた可能性もありますかね。
 それから、NERVの叛乱があったらしい。このとき敵味方を判断するために巻いたのがヴンダーのメンバーが腕に巻いてる、あの青いバンダナという話になっていました。…してみるとヴンダーのコアメンバー≒NERV造反組(生き残り)ということのようですね。まあそりゃ、前回も書きましたが司令と副司令がニアサード目撃者として部下の殆どを差し出した隙に逐電してしまったのだから、造反したくもなるでしょう。
 しかし、敵味方を判別しなければならない状況があったということは、あくまでも造反者はミサトさんとかリツコさんとかコアメンバーであり、全部が全部外道親父にそっぽ向いた訳ではなかったのかも知れません。でも多分、そっぽ向かずについてった連中って…攻め込んだ戦略自衛隊と一緒にセントラルドグマあたりで「インフィニティのなりそこない」になって積み重なったんだろうなぁ…(合掌)

渚司令の謎 おかわり!

 おかわり、二杯でも三杯でも突き出せそうです。
 それというのもアディショナルインパクト後の映像なんて「見えない世界を人間に認識させるために、LCLが無理矢理可視化した」って位置づけ3のようですから、正直何処までが現実で、どこからがイメージシーンなのかが非常に曖昧です。そうなると、あの「渚司令」と加持さんの曰くありげなやりとりなんて、カヲル君の純然たる回想なのか、カヲル君の心象を描くのに加持のイメージが代わりに喋ったのか…とても微妙。
 しかしそもそもカヲル君、回想するも何も言っちゃ何ですがあなただってQで完全無欠にお亡くなりになった筈では。
 それが外道親父が引っ込んだ途端にひょっこり出てきて「後は僕が引き継ぐ」発言です。じゃあ何ですか、お亡くなりになったわけではなくて、ずっと13号機の中であのままおやすみになっておられたと?4そりゃ使徒様ですから身体がおシャカになっても13号機と一体になってりゃこの世に居座ることもできる5のでしょうが…なんですか、この見計らったような登場の仕方は。

 そして問題の「渚司令」の謎ですが。
 ニアサードの後、サード本番を起こす前に外道親父と冬月先生がネルフ本部から逐電した6のは確かと思われます。その後に据えられたのがカヲル君…「渚司令」ということなのでしょうが、また何のために?
 加持さんが「渚司令」に敬語を使ってたってことは、公人としての「加持リョウジ」が「渚カヲル・ネルフ司令」の部下となってた時期が確実にあったはず。新劇での加持さんの役職は「NERV主席監察官」ということになっています。大体、「監査部」7だの「監察官」だのと言えば、組織の中に悪いコトしてるヤツはいないかと目を光らせるというのがお役目の筈。じゃあ、目を光らせて報告する先はどこかというと…多分それは上位組織であるゼーレでしょうな。それで行くと、加持さんはゼーレがカヲル君につけたお目付役…ということになってしまいます。
 ハテ、どっかで聞いたような話8になったな(笑)
 「そろそろカヲルって呼んでくれない?」というカヲル君の問いに、加持さんが「まだ・・お預けです」と答えたのは、カヲル君がまだ「渚カヲル・ネルフ司令」としての役目を終えていないという意味にもとれます。「お預け」というフレーズには「今は駄目だけど、条件が揃ったらOK」というニュアンスがあるのは間違いありませんからね。
 じゃあ、「渚カヲル・ネルフ司令」の役目…というか、あのシナリオの中でゼーレから振られた役割って何だったのでしょうか。

 あの時期、あの場所に残ってやるコトって言えば…サードインパクトしかなさそうに思えます。

 しかし、カヲル君は「破」のラストでニアサードを止めたご本人9です。今更自らの手でサードを起こさにゃならん理由が見当たりません10。ただ、外道親父の望むサードではなく、「ゼーレのシナリオに沿ったサードインパクト」を起こすために月から降ろされたのが本来の「渚カヲル・ネルフ司令」だったとしたら一応の筋は通ります。

 そしてゼーレとネルフとヴィレのトリプルスパイという言語道断な三足草鞋わらじを履いてた加持さんは、表向きゼーレの意向に沿ったサードインパクトを起こすために送り込まれた「渚カヲル・ネルフ司令」の監視任務に就きながら、また別の役割を期待していたということなのではないでしょうか。

 ただまぁ…マリちゃんと共謀してベタニアベースを吹き飛ばしたり11、外道親父に「ネブカドネザルの鍵12」とかいう超反則アイテムを横流ししたりと…ミサトさんも加持さんのキーワードとして「自己矛盾」を挙げてましたが、本当に誰の味方なのかサッパリ解らない13

 ただ、とことんカッコいい方で解釈するなら…
 サードインパクトを起こす側についていれば防ぐ為の方策も立つ。加持さんはそれゆえゼーレの命じるままに「渚カヲル・ネルフ司令」のお目付役として傍にいた。カヲル君としては、シンジ君を歎かせるのがわかっててサードインパクトなんか起こしたくはなかったでしょうが、結局サードは起きました14。「渚カヲル・ネルフ司令」の許でゼーレ主導のサードインパクトの仕組みに関する情報を仕入れていた加持さんは、その情報とヴンダーをミサトさんたちにもたらす一方で、自分はその阻止(というか、完遂を阻む)のために動いた、というところではないでしょうか。
 ただそこ、なんでカヲル君はサードを止めなかったのか。その時シンジ君は初号機の中に融けたまんまでしたから、何が起こったってシンジ君だけは無事と踏んで傍観したか、自分が表立って動くわけには行かないけど加持にサードを止める方法を横流ししたから何とかするだろうと思ってたか…?

 考えれば考えるほどドツボに嵌まりますね。

「老後は葛城と一緒に畑仕事でも」

 13号機を失えば現世にとどまる訳にもいかないカヲル君は、最後は加持さん・ミサトさんに付き合って「畑仕事の老後」に向かったらしいのですが…何処へ行ったのでしょう。
 この場合加持さんが言った「老後」というのは「為すべき事を全て為した」という意味でしょう。その加持さんが「あなたは役目を十分に果たした」と言ってます。ゼーレが何を考えてたかはともかく、加持さんが期待した役目に関しては果たしたと。

 「渚カヲル」という名前について、加持さんは「“渚”とは、海と陸の狭間」「第1使徒であり第13使徒となる、人類の狭間をつなぐあなたらしい・・・・・・名前だ」と言ってます。そうすると、加持さん的には「人類の狭間をつなぐ」のがカヲル君の役割だと。人類の狭間…始めと終わり、ってことでしょうか。円環の中を永劫に生き、繰り返す人類の始めと終わりを見届ける者と。アディショナルインパクトによって新しい世界がつくられるところまで見届けたら、カヲル君のこの世界での仕事はおわったと言っているように聞こえます。
 …何だかますます問題のシーン、加持さんが喋った事実があったのか、カヲル君の心象が加持さんの形を借りて語られたのか微妙になってきましたな。

 「葛城と一緒に」というフレーズからするに、カヲル君はもうこの世界には戻ってこない気がします。ミサトさんは戻ってこない。多分加持さんも。すべきことを終えて落命した二人に付き合って、カヲル君はこの世界からは退場する。そしておそらく次のループに行くのでしょう。
 その先で、存外二人の畑仕事に付き合ってたりして。で、やっぱりループしてきて稲作に静かな闘志を燃やしてる15レイちゃんと出会うと…ふふふ。いいなぁ…

定款された神殺し

 話は「Q」に遡りますが。
 外道親父が「宿願たる人類補完計画と、定款16された神殺しは私が行います。ご安心を」と冬月先生と二人でなにやら電源を落としていくシーンがありました。それでゼーレの皆さんが次々と消えていった処をみると、ゼーレの生命維持装置のようなものだったのでしょう。それを従容と切らせたゼーレの思惑がこれまた謎。旧劇と同じく「これでよい…」と納得して消えていったキール議長、外道親父なんぞに任しといたらやりたい放題なのは目に見えてるでしょうに、見届けることもなく消えてしまって「これでよい」とはどういう仕儀でありましょうか。
 これは、キール議長が外道親父の計画を承認していなければ成り立たないシーンだった筈です。となると

  1. 宿願たる人類補完計画
  2. 定款された神殺し

 この二つが、ゼーレの目論見だったということなのでしょうか。これが達成されるんであれば、後のことなんか知らない、好きにすりゃあいいじゃないかという。生きてそれを見届けることも必要ないと。
 ①人類補完計画ってのは、まあ不完全な群体としての生命(人類)を完全な生命に…とかいう話だったと思いますが、もう一つの「②定款された神殺し」については…この場合の神って誰でしょうか。この場合殺される神とはアダムとリリスより更に上位の存在、となる筈です。神=リリスだった場合、自分を殺す契約を結ぶ、というのも…絶無とはいいませんがちょっと考えにくい。
 ゼーレという組織は、人類という種を完全なものとし、生命の実を食べた種である使徒たちに滅ぼされる運命から人類を救う、というのを目的としていた。そのためにリリスと契約し、上記①②を果たすための情報を得たということであれば一応の話は通ります。ただまぁ…その「完全なもの」という概念が高尚すぎて凡俗には至極迷惑なだけだってことですよね。

 とどのつまり…なんでそこにアダム(=カヲル君)がまきこまれにゃならなかったのでしょう。
 カヲル君の正体…いや、アダムなんでしょうけど、シンエヴァでは「生命の書に名を記されている」「自らも生命の書に誰かの名を書き加えることができる」「円環の中を蜿々とループする運命」「その存在を消し去れるのは真空崩壊17だけ」という設定が追加された格好です。要は宇宙が終わるまでいろんな世界を俯瞰し続けるという存在ということだけはわかりました。下手すると、この世界の神とも独立した永劫の存在、俯瞰者ということなのかも知れません。死ぬこともなく、破格な力を振るうではなく、流れの中でただ俯瞰するだけ。そうなると柳的に一番「神様」のイメージに近いです。
 まあ、そんなことずっとやってるというなら…あの性格も納得がいきますが。

 アダムとリリス、そしてその上位神との位置関係というか利害関係がいまひとつよく解らない。これがすっきりしない一番の理由のように思えます。契約、と言うからには相手がいて、しかもその相手にとっても悪くない話でないと意味を成しませんよね。じゃあ、契約の相手たるリリスには何の益があったのでしょう?ここのところも謎。以下次項。 

結局、レイちゃんは何処に?

 マイナス宇宙を量子テレポートで逃げ回る13号機に抱えられた初号機。そこへ飛び込んでいったシンジ君の前に、初号機の中でずっと待ってた18らしいレイちゃんが現れ、「ごめん、『碇君をエヴァに乗らなくていいように』できなかった」と告げます。
 謎なのはその直前の外道親父の台詞…「もう良いのか、レイ」ですな。何ですか。逃げ回ってたのがまるでレイちゃんの意志みたいじゃないですか。
 そのあと初号機はシンジ君の制御下に入り、レイちゃんは暫く姿を消すわけですが…
 レイちゃん=リリスの魂ということでとりあえずいいのでしょうか?
 ではリリスって結局何がしたかったのでしょう?ただ俯瞰するだけのアダム(=カヲル君)と違って、人類と契約を結ぶからにはリリスには何かしらやりたいことがあったはずです。そこが謎。ゼーレにさんざっぱら利益供与しといて、リリスが得たものって一体何だったんでしょうか。ご自身は契約内容なんて忘れ去ったようにひたすら「碇君をエヴァに乗らなくていいように」するためにがんばってますが。

 シンジ君は黒波を「もう一人の君」と言いましたが、じゃあ、ポカ波=黒波?記憶が無いだけで同じ人格?そもそも記憶が無いならそれは同じ人格としてカウントして良いのか?
 ああっ理解らんっっ!!突き詰めるだけこれもドツボに嵌まる気がします。

 最終的にレイちゃんもまたシンジ君に「君も居場所を探して」みたいなことを言われて初号機からいなくなってしまいます。シンジ君が創造した「エヴァのいない世界」では宇部新川駅でカヲル君に優しく保護されていたとして、あの世界でのレイちゃんは何処へ行ってしまったというのでしょう。
 レイちゃんの身体は「破」のラスト以降ずっと初号機に溶け込んでた筈ですが、奮闘空しく13号機に取り込まれていた筈のアスカちゃんだって、どうやら身体を再生されてケンケンの許へ送り返されていた19以上、レイちゃんの身体だって再生されている可能性はあるわけです。
 第三村あたりにひょっこり漂着してまた田んぼ仕事してるというのもアリですが、場合によってはあのまま次のループに突入してるのかもしれません。
 そしてそのまま、カヲル君とのスィートな生活に突入ッ!ああ尊い…尊いなぁ…(すみませんRKSバイアス半端ないです)
 

話としてはまとまった。それはわかってる

 何と言いますか…
 要は…世をすねた外道親父が恋女房に先立たれたもんだから、世界まるごと巻き込んでもういちど女房に会おうとしたというのが真相なのですよね。そこにどうやら人類には属するらしいけど人間辞めちゃってる人々(ゼーレ20)の思惑が絡むからさぁ大変。勿論人類にはそんな超ワガママに付き合わにゃならん理由は毫もないので、ミサトさんたちが頑張ったと。すったもんだの末、外道親父は息子シンジに説教くらって「自身の弱さを認めないが故にユイに逢えない」と納得して、消えていったという結末でほぼ間違いないと思われます。
 そういう意味では、旧劇とまあ、それほど異なったものになったわけではないのでしょう。初号機に鷲掴みにされて頭から囓られる(旧劇)のも、息子に論破されて、詫びを入れながら従容と列車をおりる(新劇)のも、インパクトの中心となって作りたい世界を作ることを諦めたという暗喩…と思われます。
 その後始末をシンジ君がした。旧劇では補完を拒否して溶けちゃった人類を再生させる途を択び、新劇では真っ赤になった世界を元に戻す一方で、「エヴァのいない世界ループ」を構築したわけです。
 ミサトさんが出撃前に確認したとおり、ヴンダーとシンジ君の目的は(トウジやケンスケたちの第三村を護っていた)封印柱が壊れる前に外道親父の目論見(アディショナルインパクト)を砕き、世界を元に戻すこと。だからおそらく、マリちゃんが迎えに来て、シンジ君を連れて帰った地球は、きっと元に戻るのでしょう。そうじゃないとミサトさんを始め、ケンケン(ケンスケのことらしい…)のもとに帰ったアスカちゃんとか、歯を食いしばって脱出ポッドへ乗ったヴンダーのクルーがうかばれません。そこへ、シンジ君もまた戻って生きる道を探すのだと思います。多分マリちゃんと一緒に。
 それでもってどの時点かは知りませんが(あるいは天寿を全うした後かも…)、カヲル君によって「生命の書」とやらに名を連ねているシンジ君はその記憶を持ったまま「エヴァのいない世界」ループ(例の宇部新川駅のシーン)へ飛んだと。
 シンジ君の物語としてはまとまったのですよ。それは理解ってます。
 しかし…やっぱりいろいろ置き去りな感じは拭えませんね。

 現ヴィレメンバーによる叛乱とか、戦自のネルフ攻撃とか、加持によるヴンダー奪取とか、マリちゃんとレイちゃんズの曰くありげな会談とか、「破」のあとにあった「Q」予告(実際にはワンカットもQには出て来なかったというあの伝説のアレ)を含めると「好きに勘繰ってね♡」といわんばかりのネタがちりばめられた14年前。
 アダムとリリスと神といわれるモノについての謎もほぼ置き去り…

 …こりゃ捏造できるものならやってみろという謎かけでしょうか、監督?