花に逢う

 花に逢う             
凍てついた空気の         
霜の降りる場所さえない      
コンクリートの狭間   
     
花に逢う             
見上げた枝が           
薄青い曇天を区切り        
寒風に叛旗を翻す
         
花に逢う             
病院の壁と同じ空から       
しゃらしゃらと          
雪が降る 
            
花に逢う             
白く薄い花びらが         
雪片を受け止めて         
ゆれた 
             
花に逢う             
たったひとり           
知る人とてない遠くの土地で    
旧友に逢った  
         
一月の暮れかけた曇天の下  
 

1993,1,19
暗澹たる時代の所産。しかしあの時期も、現在を造る部品であったと今にして思う。

雨中の梅