橋上の祭 ~夢の素描Ⅱ~

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旅をしているのは            
あの人と私とそしてもう一人       
私はいつもあの人を見ていた  

    

どこへいくの              
なにをみているの            
問うこともできずに           
ただついてゆく           

あの人は私など見てはいない       

石造りの橋               
大きな広い橋の上は           
途切れることなく人々が流れてゆく    

人々の流れに              
遥か下でクロスする浅い流れ       
澄んだ水は               
石を敷き並べた川底を滑ってゆく     

私にとって厭わしいものを包んだ紙屑が  
私の手を離れ              
澄んだ流れに墜ちてゆく         
何を捨てたかより            
何処に捨てたかに怯えて         
私は周りを窺った            

祭が始まる               
石造りの橋に覆いをかけて        
橋の上で                
祭が始まる               

橋の上の天幕のなかで          
光る水がぶちまけられる         
それはつくられた暗闇のなかで      
不思議な決まった模様に広がってゆく   

あっちでも               
こっちでも               
その模様を描く光る水          
水面に映った月のような…        

橋の上は                
水で溢れている             
光る水                 
そうでない水              
うっかり足を踏み入れて         
私はその模様を壊した          

あの人は何処かへ行っている       

光る水で淡く照らされたカウンターで   
もう一人が私に言った          
「私はこのままここにいていいのかね?」 
もう一人、それは異形のもの。      
私はその異形のものを見つめた      

異形は異形               
だがどうして              
一緒にいていけない訳があろうかと    

今まで一緒にいた            
これからも一緒にいる          
それがどうしていけないのかと      

あの人が戻ってきた           
次は何処へ行くのだろう         

あの人と私、そして彼          
今まで一緒にいた            
これからも一緒にいる          
それがすべてであって          
…また、それだけだ           

誰かがきえるとき            
この旅は終わり             
私たちは                
すべてから解き放たれる         

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[su_note note_color=”#ededec” radius=”1″]1993,4,26,
ある午睡の夢。[/su_note]