王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅴ

雪催の曇天の下、王城の森を一台の馬車が進んでいた。王城を出て、ヴォリスの本邸へ向かっている。前後には騎馬の護衛が併走していた。 ついに雪が舞い始める。 その馬車の行く手に、外套マントを纏った人物が立っていた。明らかに遮るように立っているから...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅳ

サーティスは、居館にエルンストを招いて酒肴を並べたものの、しばらく本題に入ろうとしなかった。 疑念は当初からエルンストの裡に巣喰っていたが、そこに全く根拠はなかった。しかしサーティスがこの件に関して何かを知っている、というのは…至って漠然と...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅲ

エルンストが改めて調べてはみたが、ミティア=ヴォリス襲撃事件の経過はかなり曖昧だ。 ヴォリス家は停戦直前の政変に伴い当主が交代した。政変の直後から体調を崩しがちだったミティアは新当主・リオライのはからいで本邸を出て、幼時から住んでいた東別邸...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅱ

衛兵第三隊の隊舎。 シェノレスとの戦がようやく終わったばかりである。戦の爪痕もさることながら、終戦直前にイェルタ湾岸を襲った津波でツァーリ軍は甚大な被害を受けた。衛兵第三隊はその湾岸に居ながら難を逃れた数少ない隊の一つであり、隊士は事後処理...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅰ

ミティアは雪が舞う中、森へ入った。 白い森に、白い嵐が舞う。館が見えなくなる程の所まで来て、ミティアは初めて足を止め、天を仰いだ。天に向けて、もう何度呼んだか知れぬ名を呟く。だが、涙が絡まり声は声を成さない。 雪精は冬女神シアルナの娘。風に...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催

喪ったものの痛みに耐えながら責任を果たそうとする宰相リオライと新国王リュース。だが、ぎごちなさは拭えない。事件は起こる。  アリエルを止められなかったことで悲嘆に沈んでいるミティアを狙ったのは誰か。政務に追われながら、リオライは憂う。増大するリオライの負担を憂慮する側近達。