魔道都市異聞Ⅳ


Senryu-tei Syunsyo’s Novel Room(Novel-Ⅴ)
SLAYERS FF「The Dragon’s PeakⅢ」

 黒煙が流れ、火の粉が舞い散る夜空を、眩いばかりの黄金の翼が裂く。
市中いたるところに上がった火の手で、禍々しいほどに紅く染め上げられた空でも・・・それは鮮烈な輝きを放っていた。魔獣の巨体からすれば半分以下の体躯ながら、その存在感は魔獣と拮抗し、咆哮は夜気を震わせ、天を衝いた。
「ほーぉ・・・」
郊外の寺院の傾きかけた尖塔に座し、黒衣の神官は至極素直にその光景の美しさを認めた。
「なかなか綺麗じゃないですか。いい画になりそうですねえ」
両手の親指と人差し指でフレームをつくってその光景をおさめながら、青紫の眸に酷薄な光を湛えて呟く。
「ようやく、魔道都市サイラーグを灰にする決心がつきましたか?・・・律儀な竜王ドラゴンロード殿」


Senryu-tei Syunsyo’s Novel Room (Novel-Ⅴ)
SLAYERS Fun Fiction 「The Dragon’s PeakⅢ」

 正直なところ、黄金竜ゴールドドラゴンの姿なぞ見るだけで不快だった。
嫌なことを思い出すから。
大したことのない力を恃み、ただひたすらに突っ込んでくる莫迦者共。・・・そして、その程度の者たちを始末するのに、力に振り回された自分自身。
失せろ。来るな。・・・鬱陶しい。
あまり積極的に関わりたくはなかったのだが、王命とあれば是非もなし。
・・・そう思っていたのだが、あの隻腕の黄金竜はなかなかに愉しませてくれる。
忽然と姿を現した黄金竜は、空から魔獣を牽制する。数度の攻撃はその背に乗った烈光の剣ゴルン・ノヴァの剣士が、おそらくは黄金竜の魔力を載せた斬撃で繰り出していた。そりゃ反則でしょ、と愉しげに呟きつつ、ゼロスは事の成り行きを見ていた。
何かのタイミングをはかっているようにも見えた。
ある一瞬、黄金竜が急降下し魔獣の項部にくらいつく。・・・まさか、あれを持ち上げるつもりだろうか。
魔獣の体躯は黄金竜に倍する。いくら黄金竜の翼とて無理があるはずだった。だが、黄金竜はくらいついたまま離れず、翼を広げる。触手が一斉に攻撃するが防御結界を展開して退く気配を見せない。
おそらくあの防御結界は背に乗せた剣士クラウのためのもの。・・・まさか本当に盾になる気だったとは。
羽撃はばたきとともに、魔獣の身体が浮き上がる。
そうか、浮揚レビテーション
翼が生み出す揚力に黄金竜の魔力で浮揚レビテーションを上乗せすれば、出来ない芸当ではない。だが、そこまでだ。吊り上げて投げ落としたところで、あの魔獣に大したダメージにはなりえない。
だが、黄金竜はどんどん高度を上げる。狼の頭部は首根っこを抑えているからいいとして、無数の蛇の攻撃をしのぎながらの飛翔は決して楽な仕事ではない筈だ。何処か・・・大技を行使しても影響ない場所まで移送するような余裕があるとは思えない。
その時、荒れ果てた地上に複数の魔力波動を感じた。一つ一つはさほど強くない。ごく普通の、人間の魔道士が行使する程度の・・・。
黄金竜が魔獣を放した。落下を始める魔獣を一顧だにせず、暗い空へ翔け去る。サイラーグの郊外、湖のある方角だ。
「・・・成程」
魔獣は飛翔能力を持たないらしく、中空に放り出されて足掻く。惑乱して閃光の吐息レーザーブレスを吐き散らしつつ落下し、幾重にも重ねられた風の結界に弾かれる。そこへ、地上から風―おそらくは指向性の強い魔風ディム・ウィン―が吹いた。
魔獣が地上に足をつけていたなら微風程度にしかならなかっただろう。しかし落下途中なら魔獣とて翼なき身ではどうすることも出来ない。人間の行使する精霊魔法でも、ある程度術者の数を揃え、タイミングを合わせれば相応の力にはなる。
そう、先刻黄金竜が翔け去ったほうへ弾き返す程度のことは。
吹き飛ばされた魔獣の巨体は待ち構えていた黄金竜の爪と牙で捕らえられ、加速の方向を曲げられて直下の湖へ投げ落とされた。
「お見事!」
ゼロスは見せ場クライマックスを賞賛する観客のごとく、手を拍って立ち上がった。そして莞爾として呟く。
「では、そろそろ終幕フィナーレですねえ・・・」

「・・・凍界結ラーフリーズ
ミルガズィアは魔獣を湖に叩き込み、そこから上がる暇を与えずに呪文を発動させる。強烈な冷気に、湖は魔獣と魔獣の立てた水柱もろとも凍りついた。クラウが短く口笛を吹く。
「さっすが黄金竜ゴールドドラゴン、この湖を一瞬とはね」
「足を止めただけだ。仕留めろとはいわんが、はずすな」
「あのねミルさん。誰に向かって言ってんの!」
クラウが翔んだ。結界の外に出たため、緋の髪が突風に踊る。
「―――――光よ!」
長大な光の刃が、闇に沈む凍った湖面を照らし出す。氷に乱反射する光は周囲を圧したが、クラウは標的を見誤ることはなかった。
気合とともに振り下ろした刃は、白銀の魔獣の首筋を切り裂いた。魔獣が咆哮し、厚い氷が脆く崩れ去る。砕けた氷塊がクラウを襲うが、構わず落下の力も斬撃に換える。
光の剣を振り抜くと、背に負ったもうひとつの剣を抜き放ち、その傷口に向かって投げた。
「ミルさん!」
投擲された剣は黒々と口を開けた傷の内側へ、あやまたず刺さる。
「・・・雷撃破ディグ・ヴォルト
その剣に向けて、雷が落ちた。轟音と共に周囲が光に満たされ、一瞬の後に魔獣が炎に包まれる。耳を覆いたくなるような苦鳴が大気を震わせ、瘴気が吹き上がった。
炎に包まれながら天に向かって吼え猛る魔獣の影が、ゆっくりとその形を失ってゆく。
クラウが浮揚レビテーションをかけながら接地したとき、狼の頭部がクラウの負わせた傷から崩れ落ちるのが見えた。
呪文で凍った湖も劫火の前に融けてゆく。天衝く火柱も湖の中では森を焼くこともない。
どのくらいそうしていたか、憶えていない。クラウが深く息を吐いてその場に膝をついたとき、誰かに呼ばれた気がしてふと顔を上げる。だが、明るみ始めた空の下、目の前には焼け崩れる魔獣の骸があるばかり。
「・・・クラウ?」
今度こそ聞こえた。クラウの背後、薄明の光の中に再び人形じんけいをとったミルガズィアの姿があった。
「あ、ええ、大丈夫よ。ちょっと力が抜けちゃっただけ」
「・・・余り大丈夫そうでもないな」
ミルガズィアがクラウの傍に片膝をつき、額に軽く触れた。クラウも初めて気づいたが、先刻砕けた氷を浴びたときにかすり傷をつくっていたのだった。
触れた掌から淡い光が広がった。普段なら、「このぐらい怪我のうちじゃない」と撥ねつけるところであっただろう。しかし、その光が持つ暖かさに何となくほだされ、軽く目を閉じて大人しくその暖かさを感じていた。
「ミルさんこそ大丈夫なの?一番キツかったのあなただと思うんだけど」
「まあ確かに、あれだけ動き回ったのは久しぶりかも知れんな。だが、どれほどのこともない。・・・これで良かろう」
光が収斂する。心なし、身体が軽くなったような気がした。
「毎度ありがと。・・・さてと、あの莫迦、またふらふらどっか行かないうちに捕まえとかなきゃ」
クラウがそういって立ち上がると、ミルガズィアは何を言おうとしてか口を開きかけた。
「・・・ん、何?」
明らかに途中で飲み込んでしまったらしい様子に、クラウは問いかけてみた。しかし、ミルガズィアは僅かに目を伏せる。
「・・・私は、この瘴気をなんとかする算段を立てる。思ったより凄まじい量だ。このままでは瘴気で森が死ぬだろう」
言われて、クラウは小山のような魔獣の骸を振り仰いだ。まだ悪臭を含んだ煙が上がっていたが、それよりも胸が悪くなるような瘴気が大気と湖水をじわじわと蝕んでいるのがわかる。
「・・・私で、手伝える事はある?」
一応、訊いてみた。戦闘時に使用する浮揚レビテーション烈閃槍エルメキア・ランスはともかくとして、浄化に類する魔法とは縁のないクラウには手に余るのは明らかだったが、この事態をミルガズィアに丸投げして行くのは多少気が引けたのである。
「気にするな、私の仕事だ」
何か、表情を隠しているように見えたのが気がかりではあったが、クラウは詮索しなかった。
しかし、踵を返したクラウは向こうからこちらにやってくる人影に足を止めることになる。口髭をたくわえた初老の男性。昨夜の騒ぎの渦中にいた所為だろう、煤と土埃で多少汚れてはいたが、本来はきちんとした身なりの神官と見えた。
瘴気を発し続ける魔獣の骸を唖然として見上げ、声もない。
「・・・この土地の神職か」
ミルガズィアが声をかけた。初老の男性は飛び上がりそうなほど驚いた様子ではあったが、クラウとミルガズィアの前に深々と頭を垂れた。
「勇気と力ある御方に心よりの感謝を。・・・サイラーグのスィーフィード神殿にお仕えする、ロドス=ラーダと申します」
「ではロドス卿。・・・土地の者に伝えてはくれぬか。魔獣は斃れたが、この瘴気・・・今すぐには如何ともし難い。暫くこの周囲には瘴気が立ち込めるだろう。なるべくなら、人を立ち入らせぬようにと」
「いつの日か、晴れましょうか・・・この瘴気が」
「手段は講じる。だが、時間がかかるだろう。人間なら数代を経るほどの時間が・・・」
ミルガズィアの言葉に、初老の神官は寂びた声で笑った。
「夜が明けると判っていれば、待つことは難しくありませぬ。・・・ありがとうございます。早速に神官長に言上いたしましょう」
そう言って、もう一度頭を下げる。街へ戻っていく神官を見送って、ミルガズィアが呟いた。
「勁いな、人間は」
「そうね・・・勁くて、脆くて、よく失敗するわ。でも、躓いたって・・・足があればまた立って歩けるもの」
「・・・至言だな」
「じゃ、行ってくるわ。蹴っ躓いた上にどうしようもなく派手にすっころんだ大莫迦を、あのガレキの山から探し出してこなくちゃ」
悪戯っぽく笑ってそう言い、クラウは街のほうへ足を向けた。

 そのままクラウを見送る。だが、魔獣の骸に向き直ったミルガズィアから表情が消え、目許を苦しげでさえある翳りが過ぎった。
・・・多分、尋ね人は見つからない。
勇気と力ある者。先の神官はそう言ったが、少なくとも自分には当てはまらぬとミルガズィアは思った。自分には勇気などありはしないのだから。
不吉な直感。それを結局、ミルガズィアはクラウに告げることが出来なかった。
いずれ判ってしまうこと。・・・告げたところで、彼女は受け容れたか?答は否。どれほどの論拠を並べようと、彼女は彼女自身の感覚を信じるだろう。そして、自分自身で確かめるまで決して立ち止まることはないだろう。彼女と行動を共にして、そう何日も経っているわけではない。だが、そのくらいのことは容易に想像がついた。
しかし何より、あの柘榴石ガーネットの如き輝きが損われるのを見たくはなかったのだ。・・・それを償うすべを、ミルガズィアは持たなかったから。
燻り続ける魔獣の骸を見上げ、そして遮るように目を閉じる。
畢竟、この地上に生きる者の身で、思い通りになることなど何一つありはしない。・・・どれほどの魔力を持っていようと、ひと一人救うことも叶わぬ程度のものでしかないのだ。
・・・それでも、自分はまだ生きている。生きているからには、できるだけのことはしよう。それが、生きているものの役目だから。

 クラウは、戦のあとのような市街をただ一人の姿を捜して歩き回った。
都市ごと灰になる事態は避けられたものの、「魔道都市」サイラーグが壊滅状態なのは明らかだった。どれほどの人間が喰われ、どれだけの人間がこの瓦礫の下敷きになったかなど、もはや調べようもない。
この都市は、一度死んだのだ。
しかし、生き残った人々は早くも市内へ帰り始めていた。燻る建物に水をかけ、倒れた壁や柱を取り除き、ありあわせの布を接いで天幕を張り、負傷者の治療も始まっている。
一方で、累々たる屍を安置するところまで、皆の手は回っていない。鬼哭啾啾たる惨状もまた、同じ場所に存在していた。
『人間は勁い』
竜王はそう感嘆する。否定はしない。だが、皆がそうなれるわけでもない。遺骸に取り縋る残されたものたちの嘆きが、クラウの胸を刺す。悪い予感が、胸腔に冷たい空気を落とし込む。
昼を回った頃、昨夜動員された魔道士が集合した場所を探し当てたが、集った魔道士たちはそれぞれ救護や片付けに散っており、声をかけて回った者の行方など尋ねようがない。・・・魔獣が落下する際、派手に閃光の吐息レーザーブレスを撒き散らしたらしいから、幾人かは巻き込まれた可能性がある。
「・・・要領悪いもんね・・・」
不運にも巻き込まれた幾人かの中に、マリウスがいたとしても・・・クラウは驚かない。
倒れた石柱に腰掛けて、クラウは吐息した。
惨状のなかでも辛うじて被害を免れた井戸の周りに、水を求めて人が集まっている。傷つき、水を汲む力も残っていない者も少なくない。数人の神官らしき風体の者たちが、たどり着いたまま地に伏す負傷者たちに水や食料を配り、救護所へ搬送するために奔走していた。
そういえばスィーフィードの神殿があるとか・・・これだけ大きな都市だから当たり前だが。
手がかりの消えた人探しをするくらいなら、彼らを手伝ったほうがいいのかも知れない。むしろ、そのほうが手がかりになる可能性だってある。
「貴女様もお疲れのご様子・・・まずはどうぞ」
立ち上がろうとした時、声をかけられてその方を振り仰ぐ。今朝、湖の様子を見に来た初老の神官。木を刳り抜いた椀に水を湛え、今朝と同様に穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
「有難う・・・ラーダさん、でしたっけ」
考えてみれば昨夜から飲まず喰わずで走り回っていたのだ。差し出された水に急に咽喉の渇きを覚え、椀を受け取った。
「ご記憶いただけていたとは光栄です。・・・お連れ様を捜しておられるので?」
神官のいう“連れ”は明らかにミルガズィアを指しているようであったので、クラウは静かに首を振った。
「・・・捜しているのは確かなんだけど、あのひとじゃないの。ゆうべ、魔獣を湖へ弾き飛ばすのに魔道士を集めて回った奴がいたと思うんだけど・・・なにか知らない?」
「そういう方がおられた、という話は聞き及んでおりますが、行方までは。・・・もしやお怪我をされているのならば、救護所のほうへ運ばれたのかもしれません。よろしければ、神殿の救護所へご案内しますが。私も、そろそろ交代時刻ですので神殿へ戻らねばなりませんし」
ラーダという神官の申し出は願ってもないことだった。救護所で手が要るなら手伝っても良い。魔法医が出来るほど治療魔法のバリエーションがあるわけではないが、簡単な治癒リカバリーならできる。治療の手が足りていたとしても、猫の手も借りたい状況に変わりはあるまい。
そう思って救護所を訪れたクラウだったが、想像を絶する惨状に暫し声を失うことになる。
神殿の建物は比較的堅牢であったものか、外構はともかく建物自体の損壊は少ないようであった。そのため負傷者がまず運び込まれることにもなったのだろう。神殿の救護所とはいうが、神殿自体がほぼ負傷者で埋め尽くされる有様である。もはや、建物の中では足りず、中庭に毛布を敷いた上に横たえられている者すらあった。
「・・・これは・・・悠長に人捜ししてる場合じゃないわ。手伝わせてもらっていい?」
「有難い。願ってもないことです。神殿にも治療の手はございますが、見ての通りの有様で・・・とても足りませぬ。お力をお貸しいただけるなら幸いです。お待ちください、巫女頭に話を通してまいりますゆえ」
ラーダが指揮所と思しき天幕へ入っていく。負傷者の苦鳴や啜り泣きに混じり、身内を捜して回る声も聞こえる。尋ね人のことが過ぎったが、クラウは無理矢理それに蓋をした。
その時。横たえられたり蹲ったりしている負傷者の列の間をすり抜ける、場違いな黒い法衣を見た気がして思わず振り返る。まさか、こんなところに。
振り返っても、憎らしいほどに艶のいい黒髪が視界に入ることはなかった。そうするうちに、ラーダがあたふたと指揮所から出てくる。巫女らしい娘を連れていた。
「お待たせしました。この者がご案内を・・・」

 嘆き、怒り、悲しみ・・・およそ、魔族の糧となりそうな総ての感情がそこに渦巻いている。
量は申し分ないですけど、質がいまいちですね。
神殿の屋根の上に座し、黒衣の神官は勝手な理屈を呟いた。仕事は済んだ。あとはささやかな余禄にあずかるだけ。
あえて“食事”にいそしまずとも、然程飢えているわけではない。だが、熟れきった果実が手に落ちてくる瞬間をそれなりに楽しみにはしていた。
強く輝く生命力を持った人間が、絶望に突き落とされる時に発する感情。それは、ここいらに渦を巻いているものが塵芥ちりあくたとしか思えない程に芳醇で・・・そう、まるで人間が良い酒を味わう一瞬のような悦楽を感じる。
クラウディア=ガブリエフという、強い輝き・・・それが絶望に塗りつぶされる瞬間。それはもうすぐ。
焦りませんよ、僕は。
獣神官が、嗤う。

 かつて緑に覆われていたカタート山脈は、瘴気の風吹きすさぶ荒地と化していた。
むき出しの岩肌に、点々と血の痕が続いていた。
右腕を爆砕され、目の前で同胞を焼き尽くされてなお、ミルガズィアは生きていた。生き残った者には生き残った者の責務がある。ただそれだけが、彼を動かしていた。
治療呪文が効かぬ。傷からはずるずると血が流れ続けるが、ミルガズィアは歩き続けた。竜身に戻ったところで飛翔する力など疾うにない。軽量な人形じんけいをとることで辛うじて身体が動かせるに過ぎないのだ。歩けること自体、既に奇跡に近いのだが、そんなことに頓着できる状態ではなかった。
主力が殲滅されたことを、竜族の本拠へ伝えねばならない。
方角が合っているかすら、疑わしい。だが、動くことをやめればその時点で本当に動けなくなってしまいそうで、足を止めることができなかった。
竜の翼が風を切る音さえも、幻聴と断じてただ歩き続けていた。
名を呼ばれ、強く揺さぶられてはじめて、それが幻聴でなかったと知った。
視界に広がる緋色が、自身の血の色でなかったことに安堵した瞬間、膝から力が抜けた。
『・・・すみません・・・アリス・・・無様な、いくさ、を・・・』
『そんなことはどうでもいい!よく・・・生き残った』
いつもどおりの、勁い声。かすんだ視界に緋色だけが鮮烈。
『・・・前衛および主力は全滅・・・後衛の安否は未確認・・・』
伝えなければ、という想いだけが、辛うじて声を絞り出す。声になっていたかどうかは、既に意識の埒外。
『それ以上喋るな、血に混じって聞こえやしない!何だ、この呪いカース紛いの瘴気は!これじゃ・・・いくら治療をかけても血が止まらない・・・!』
短い呪文が瘴気を祓う。身体が軽くなるのを覚えたが、もう立てない。すこしうわずった声に名を呼ばれ続けているのは判っていたが、既に声も出なかった。
貴女でも慌てることがあるんですね。場違いなことを呟きながら、ミルガズィアは意識を手放した――――――

 降魔戦争の頃、アリステアという黄金竜がいた。黄金竜としては珍しく、人形じんけいをとった時の姿が緋の髪と紅の眼であったのは、古代竜の血筋を引いていた所為だともいう。魔道に長け、強大な戦闘力を誇り、炎を纏うが如き容姿を裏切らない鉄火肌だったが、教導師メンターとして多くの若い黄金竜を鍛えた。
彼女が最後に鍛え、そのすべてを譲ったのがミルガズィアだった。教導師と弟子以上の関係だった時もあったが、当時のミルガズィアは揶揄からかわれているとしか思っていなかった。
そうでなかったと気づいたのは、彼女がミルガズィアの前から姿を消した後のことであった。

 魔道都市サイラーグにとっては悪夢のような一夜が過ぎ、それが夢でなかったという現実に直面する一日も終わろうとしていた。
ゆっくりと暮れてゆく空に、黄金竜の姿を認めたものがどれだけあっただろう。いまだ黒煙途絶えぬ空の一隅を静かに滑っていったその竜の体躯は、前夜の黄金竜のさらに半分ほどだったであろうか。
森の中へ降りた。その若い竜の背に乗っていたエルフが飛び降りると同時に、人形をとる。少年というにはやや育ちすぎ、青年というには貫禄が足らないといった風情であったが、ミルガズィアと同様の薄蒼い法衣を纏っていた。
立ち込める瘴気に若い竜は思わず咳き込み、そのはずみで先刻まで見えていたはずの目印を見失ってきょろきょろしていると、通り過ぎた闇の中に明かりライティングの淡い光が現れた。
「此処だ、イリシオス・・・棟梁まで?」
弾かれたように振り返る。瘴気によって葉を落とし始めている樹の上に、長老に名を連ねる竜の人形じんけいをとった姿があった。慌てて馳せつけると、その前にひざまづいた。
「遅くなって申し訳ありません、ミルガズィア様」
「よい。こちらこそ、こんなところまで急な使いを頼んで悪かったな。
それと、棟梁・・・」
ミルガズィアが掌の中の明かりを消し、質量を些かも感じさせない所作で舞い降りる。
「元はといえばうちの不始末だ。お前さんらばかりに厄介かけられんよ」
ミルガズィアが何事かを言いさすのを制して、ラインソードの棟梁が言った。
「回収したゼナファ、確かに受け取った」
「すまないが、胸甲に傷が入っている。制御機構そのものは壊れていないと思うが・・・」
「傷ですんだら重畳さね。初期設定イニシアライズの甘いゼナファなんぞ危なくてしょうがないということがよくわかったさ。いい機会だから初期設定からやりなおしておく。・・・本当に、厄介をかけた」
「頼む」
「火急のことで、ひとつしかご用意できなかったのですが・・・よろしかったのですか?」
イリシオスと呼ばれた若い竜が掌に乗るほどの小さな麻袋を差し出す。
「この瘴気だ。あまり数蒔けばよいというものでもあるまい。・・・ご苦労だった」
袋を受け取り、ミルガズィアが先に立って歩き出す。
「棟梁も、見ておくか。人間が作ったゼナファの残骸を」
「そうだな」
程なく、闇に沈みつつある湖が見えた。
「・・・っ!」
思わず、イリシオスが口許を押さえる。今までに感じたことのない濃い瘴気に、眩暈がしそうだった。
「見物していても構わぬが、障壁シールドは自分で張ることだ」
「は、はい・・・」
いわれて気がついたが、ミルガズィアとラインソードの棟梁はとうに障壁を展開していた。余りにも自然で、判らなかったのだ。
ミルガズィアが麻袋の中から胡桃よりもやや小さい程度のいびつな褐色の塊を取り出すと、掌に乗せて呪を唱え始める。程なく塊が割れ、ほの暗い水辺に光を放つかのような瑞々しさをもった子葉が覗いた。
茎がするすると伸び、本葉数枚が姿を現したところで、暗い水面へその種子を投じた。種子はいまだ燻り続ける魔獣の骸のすぐ傍へ落ち、すぐに根付いて水面から顔を出す。細い茎は見る見るうちに木質化し、芽というより苗木となった。
神聖樹フラグーンがこれほどに急激な成長を遂げるのを見たのは、初めてだな・・・」
ラインソードの棟梁が驚きの中に微かな畏怖をこめて、呟いた。神聖樹フラグーン。瘴気を取り込み浄化しつつ成長する樹木。発芽させるには呪が必要であったにしろ、この成長は早すぎる。それだけ、魔獣の骸が発する瘴気が濃いということなのだろう。
「・・・そうだろうな」
幹が一抱えほどになり、見上げるような高さにまで伸びると、いったんその成長は止まる。だが、凄まじい勢いで瘴気を取り込み続けているのがイリシオスにも判った。周囲の瘴気が濃いことには違いないが、先程より随分呼吸がし易くなった気がする。
これから何年、何十年という歳月をかけて成長しづつけ、いつかその役目を終えたなら・・・何の変哲もない巨木としてこの街を守り続けるのだろう。
「・・・ミルガズィア様は、これからどうなさるのです? 長老方が・・・」
「悪いが、もう暫く勝手をさせてもらいたい・・・ほかの長老方には上手く言い繕っておいてくれ」
“そろそろお戻りを”と伝言を承っているのですが・・・と言おうとして、さらりと機先を制されてしまう。
このひとの物言いはいつもそうだが、決して高圧的ではないのに、どういうわけか拒絶を許さない。イリシオスにとっては従うことが至極まっとうで、他の選択肢などありえないような気がするものなのだが・・・今度ばかりは、少し違った。
何か、本当に申し訳なさそうで・・・それはそれで、「いえ、そういうわけには」などと杓子定規な返答をすることがひどく悪いことのような気がして、気がついたら頷いていた。
「・・・はい」
「我儘を言うようで済まぬ。・・・まあ、そう長いことでもないが・・・」
そう言って、伏せ加減の視線をわずかに彷徨わせる。一瞬のことではあったが、それは愁いに似た翳りをおびていたように見えた。
「僕は・・・なにか他に、お手伝いが出来るでしょうか」
イリシオスの様子に、ミルガズィアは自分がひどく難しい表情をしていると思ったのか、微かに笑った。
「いや・・・良いのだイリシオス。済まないな。そういえば、縮地を教える約束もそのままだった。まだ、手直しが要りそうなのでな。もう少し待ってくれるか」
「憶えていてくださったのですか。有難うございます」
若い竜の表情が明るむ。他愛のない約束でも、憶えていてもらえれば嬉しい。況してそれが、憧憬の対象であれば。
イリシオスは丁重に辞去の礼を執り、数歩退がると竜身に戻った。
「・・・すまないな、棟梁。借りた剣だが、この化物を倒すのに結局潰してしまった」
「気にするな。役に立ったら上々だ。・・・じゃあ、イリシオス、毎度すまんがよろしく」
イリシオスが身を屈めてラインソードの棟梁を乗せる。ミルガズィアは黄金の翼が飛び立つのを見送った。

 あの夜、魔獣に喰われた人間の数はもはや数えようもない。
それに数倍するであろう死傷者の数も、また。
夕闇が迫り、星が瞬きはじめる時刻になってもなお、クラウは戦場のような救護所にいた。
さすが大都市のこと、備蓄物資が底をついても比較的早く近隣の都市から補給が受けられる。天幕のない中庭にまで怪我人が横たえられる事態は夕刻までにはなんとか収拾がついた。激務に倒れる神官、巫女も出始めている様子だが、戦地に身を置いてきたクラウは短い休憩を挟むことでまだ些かの余裕を残していた。
運びこまれる怪我人の数も一段落し、治療を待つ者の列がとりあえずは途切れた時、巫女の一人が座り込んでいるクラウの傍へ飲み物を捧げ持って来た。
「貴女様もお疲れでしょうに、申し訳ありません。まずは暫しお休み下さい」
「ありがと。・・・とりあえずは一段落ってとこかしら?」
「はい、神殿に運ばれて来た者については。・・・一番被害がひどかった街区はまだ救助作業が続いているようですから、生存者があればまた運ばれてくるかもしれませんが」
「一番被害がひどかった街区というと・・・最初に魔獣が姿を現したあたり?」
「はい。・・・規模の大きな魔道士の研究所があったとかで・・・ほとんど更地に近い状態と聞いています。残った瘴気もひどくて・・・多分、救護所に運ばれてくるようなことはないと思います」
要するに、生存は絶望ということか。クラウは天を仰いだ。しかし昨夜、クラウもミルガズィアもそこから少しはなれた場所でマリウスの姿を見ている。そして、マリウスが魔道士の数を集めて作戦に協力してくれたことも確かだ。あの場所にいるはずはない。
「どなたか、お探しと伺いましたが」
沈黙してしまったクラウに、巫女がおそるおそるといったていで声をかける。
「ん、そうなの・・・でもまあ、そんなところにいたはずないしね・・・」
クラウが深く息を吐いたとき、別の巫女の一人が救護所に走りこんできた。
「生存者ですっ! 誰か、傷を塞げる者はいますかっ!」
クラウが即座に立ち上がる。
「私が動けるわ」
「すみません、おねがいしますっ!」
戸板に乗せられ運ばれてきたその負傷者は、普通の人間であればもうやることといえば弔いの準備ぐらいのものであっただろう。大腿部は折れ、腹部に強い挫創がある様子だった。恐らくは、瓦礫の下敷きになったのであろう。・・・それでもまだ息があるのは、その負傷者が獣人である所為であることは間違いなかった。狼の頭部。松脂で固めたような毛並は、それだけで軽装鎧程度の硬さはありそうだったが、さすがに挫創は逃れ得なかったらしい。
通常、この状態で下手に治癒魔法などかけても、治癒する前に体力が保たずに落命する。しかし、獣人の体力ならばある程度耐えうる可能性があった。呼びかけてみると、意識はあるようだが唸るばかりで返答はない。
魔道都市と呼ばれ、合成獣キメラや獣人の類にも多少の免疫があるはずのサイラーグの巫女たちでさえ、二の足を踏んでいたが、クラウは迷わず治癒魔法をかけた。
案の定、一回の施術で唸りが止まり、呼吸が平静に戻っていく。大腿部の骨折についてはそのあと一応の整復をしてからもう一度治療魔法をかけることで、どうやら動かせる状態にまでなった。
戦場流の荒っぽい整復でも、獣人の体力ならもつだろうという成算があるにはあったが、その際に獣人があげた凄まじい咆哮に二、三人の巫女が倒れて運ばれていった。幾分、疲れもあったのだろうが、そのお陰で看護の手が足らなくなり、補充要員が来るまでの間、結局クラウがその獣人についていることになった。
クラウが消毒薬を兼ねて置いてある火酒をわずかに木の椀に失敬したとき、その獣人が眼を開けた。
「さすがの体力だわ。よかったわね、生きてて」
「・・・おかげさんで」
獣人はれかけた声で応えた。
「荒っぽいなぁ。あんた、傭兵か?」
「見りゃ判るでしょ。でも今は休業中よ」
そういって、呑み損ねた火酒を呷る。狼の頭部が軋む音が聞こえそうなぎごちなさでクラウのほうを向いた。そのままクラウをまじまじと見つめているので、とりあえず訊いてみる。
「あんたも飲む?」
「・・・ひょっとしてあんた、クラウディア=ガブリエフか?」
クラウの手が止まる。
「こんなところまで名前が響くほどの有名人になった記憶はないわね」
獣人は深く息を吐き、瞑目する。
「・・・俺はセザル。マリウスの旦那には世話になったんでな。あんたのことは聞いてるよ。・・・そうか、来ちまったのか」
木の椀が落ち、床で乾いた音を立てた。
「・・・ちょっとあんた、今、なんて言った・・・?」

 夜空には煌々と月が君臨していた。
人声の絶えた神殿の中庭。動けるようになった者は帰り、行き先のないものは神殿が別の場所に設営した避難所に移り、動けない重傷者はなんとか神殿の建物に収容された。同時に緊張の糸が切れた巫女や神官の中にもばたばたと倒れるものが出たようだが、戦場のような空気は徐々に薄れつつあった。
昼間には負傷者の呻きで満ちていた中庭も、今は噴水の静かな水音だけが流れていた。
クラウは噴水を受ける水盤に身体を預け、月光の支配する空を見ていた。
「・・・いよいよ私の感情を喰らいに来たの?この出歯亀魔族」
視線を動かさず、クラウは言った。
「そぉいう呼び方はやめてくださいったら・・・それに関しては完全に濡れ衣なんですって」
月下に、黒衣の神官が姿を現す。
「これを待ってたんでしょ。・・・私が、マリウスのことを知ってしまうのを」
セザルと名乗った獣人。マリウスの言葉では魔獣に呑まれたはずの彼は、別の事実を語った。
あの夜、研究所に担ぎ込まれたマリウスは・・・気がつくが早いか製作途上の装甲を纏い、起動し・・・そして、喰われた。
被験者となるはずだったセザルの目の前で。
実験の破綻を目の当たりにした他の魔道士達が建物ごと封印を試みる中、セザルは閉ざされた部屋の中に残った。・・・最後まで装甲の制御を試みたマリウスの助手をするために。
・・・そして、魔獣の顕現と共に崩壊した研究所の瓦礫に埋もれた。普通に考えれば、装着者を除いて真っ先に喰われた筈の彼が何故生きていたのかは判らない。しかし彼が獣人でなければ生存は絶望的であった状況を考えれば、偶然と考えるのが妥当だろう。
あるいは、マリウスに残された最後の理性だったのかもしれない。
「お生憎あいにく様・・・私は、絶望したりはしないわよ」
月を見上げたまま、微かな笑みさえ浮かべて・・・クラウは言った。
「ほう・・・それはまたどうして」
ゼロスとしては、どうしても知りたかった訳ではない。おそらくは売り言葉に買い言葉。滾るような感情はそこになく、クラウはただ静かだった。あてが外れてなんとなく面白くなかった所為もあろうか。
「・・・もう、とうに覚悟は出来てた。今更、あいつの介錯にまわる破目になったからって、驚きゃしないわ」
「その割には、熱心にお探しのようでしたけれど。えらくさっくりと諦めてしまわれるのですね」
揶揄からかうように・・・しかし青紫の光の奥でクラウを油断なく観察している。
「やめるのと諦めるのとでは、次の道が違ってくる」
クラウは、ゆっくりと身を凭せ掛けていた水盤から身を起こし、立ち上がって黒衣の神官に対峙した。
「・・・私は理解した。だからもう捜すのはやめる。私がしなくちゃならないことへ向かう。・・・そこに理不尽はないのよ。それが、生きていくということだから。自分の亭主が生きながら引き裂かれるのを目の当たりにしたら、大概のことに覚悟はできるわよ」
緋の髪が微風に流れる。
「マリウスが生きているように見せかけて・・・状況を味付けしてくれたりと、随分とお膳立てに手間暇かけたみたいだけど・・・期待はずれで悪かったわね」
クラウは乾いた笑みで応じた。あの夜クラウとミルガズィアの前に現れ、魔獣を討つのに力を尽くしたのは確かにマリウスだった。・・・しかしその身体は既に魔獣に喰われていた。魔獣に喰われた身体から魂を引き剥がし、一時的にでも他者と接触できる仮の身体を与えることができる者があるとするなら、それは神か魔にほかならない。
たとえそれが結果的に魔獣を討つことに加担するとしても、自分に都合の良い状況をつくるためなら少々の手間隙をかけることは厭わぬ・・・そういう者を、クラウは識っていた。そうしてまで、あくまでもクラウに・・・魔獣を討たせようとしたその理由も、大体見当はつく。
「・・・理解しがたいことでしょう。理解したいとも思わないでしょうけどね。
変わることを拒み、ひたすらに滅びを希む者・・・魔族よ、私がお前に屈することは決してない」
毅然という言葉では表しきれない強靭な何かを包んだ微笑がそこに在った。

 ―――――――これ・・は、人間か?

 目の前の彼女が人間としては並以上の魔力を持つことは知っている。しかし人間として以上の魔力を感じることはない。だが、ゼロスは一種不気味とすら思える何かを感じ、口を噤んだまま彼女を見つめた。知らず、杖を持つ手に力すらこもった。
容易に握り潰せる果実。その認識が揺らぐことはない。だが、そうすることが自身にとって、あるじにとって、ひいては魔族全体にとって・・・途轍もない災厄の種子となる気がした。
「・・・いいでしょう・・・」
獣神官は小さく吐息した。
この果実が災厄の種子を抱いているというなら、それを見定めねばならない。なにも危険を冒して自身の手を汚さずとも、百年もあれば結果は出る。果実が土に還り、残された種子が芽吹くとして、必要があればその時に刈ればよい。
「・・・焦りませんよ、僕は。今夜はこれで失礼することにしましょう」
魔族の姿が闇に融けて消える。それを透明なまなざしで見送ったクラウは、再び月を仰いだ。
月が、翳る。・・・雲ひとつない空で。クラウがもう一度笑った。両眼の柘榴石ガーネットに幾分、泣きそうな色彩を湛えて。
すこし蒼褪めた唇が声を紡がないまま、かそけく震える。
・・・遅いよ。
クラウを辛うじて立たせていた緊張の糸が切れ、その身体がゆっくりと傾ぐ。だが、それを音もなく受け止めたのは中庭の冷たい石畳ではなかった。・・・もはや、クラウの意識の埒外ではあったが。

To be continued…