絶唱のあとに

 柳が「篝火は消えない」という小説を書き始めた年代は、泣いてばっかり、役立たず、足手纏いなヒロインというやつが大の苦手でして(今でもそーなんですが)ツァーリ編でいうとミティア嬢なんて書きにくさの権化だったのです。…だもんで、本作の主人公のひとりであるソランジュも最初に書いた時には非常に動かしにくかったのを憶えています。お陰で今ひとつ消化不良だなーっと思いながら一度は「残照の日々」の筆を措いたのでした。

 しかしまぁ、人間歳をとるとそれなりに見方も考え方も変わるもので…
 先年、「篝火は消えない」を番外編「巣立ちの歌」とあわせて全面リライトしたとき、ミティア嬢とその周辺もがっつり書き直しました。その過程でいろいろ柳としても整理がつきまして、アンリーとソランジュちゃんのお話もちゃんと書きたいなあと思うようになったのでした。

 勿論、クロエ姐さんをもーちょっと書きたいという野望もあったのですが…これで一応、ホントは純愛物ラヴストーリーが書きたかったのです。ソランジュちゃんの10年越しの片恋が稔るまでの話ですからね。このお話の本来のラスト、というかエンディングは、水面を滑る船の舳先に立ってアンリーのための最後の祈りの歌を絶唱するソランジュちゃん…という構図をカメラがパンしていく、というシーンだったりします。柳の力量不足で本文中には入れ損ねましたが。1
 しかしまあ、どストレートにこの二人だけでお話を進められるほど柳も器用ではありませんで、やっぱりクロエ姐さんに出張ってもらうことになりました。やっぱり強くて美人でデキる姐さんは好きです♪

 予想外に出しゃばった人誑し幼児ヴァン・クロード…はい、察しのいい方はもうおわかりかと思いますが、サーティスの子です。今回は無邪気なマスコットキャラですが、「篝火は消えない」第2部においてはおそらく中核メンバーになると思われます。(<大幅リライトになりそーなので未確定だったりして(笑))

 クロエ姐さんのめっちゃドライな人生観というか恋愛観がへーきだと仰る向きはこちらもどうぞ。

池田聡さんの『星あかりのオール』を聞いてクラッときた勢いで書きました。

 なんだか結局いつものかったーいトーンのお話になってしまったようで、柳はこれでも一応反省しております。「西方夜話」からこっち、突発的に「恋愛物書くんだい!」と発奮しては挫折を繰り返し…もう何年になるでしょう。
 一度でいいからマトモなラヴストーリーというやつが書いてみたいものです。

 ご意見、ご感想お待ちしております。


 暑中お見舞い申し上げます。連日うだるような暑さが続いておりますが、皆様如何お過ごしでしょうか。

 この4月から末っ子が海が見える高校に入学しまして、これまた海が見える寮生活で自炊も始めたもんだから、支援物資を運ぶ為にこの数ヶ月毎週のように海岸をドライブしてます。海の色がそりゃぁ美しくて、思わずハンドルを誤りそうなくらいでして…やっぱりそういう景色を見てると海の物語が書きたくなります。写真の方はいずれ画房にもアップいたしますので、その節は是非ご来訪いただきますよう。

 さて、EVER AFTER(シンエヴァFF)がほったらかしですな(汗)8月のアニマックスはエヴァ祭りらしいので、どっぷり観嵌まってエネルギーを充填することに致しましょう。

 それでは、今後ともお見捨なきよう願い奉ります。
 末筆ながら、炎暑の候 皆様くれぐれもご自愛くださいませ。
 

2023/08/06

千柳亭春宵 拝

  1.  池田綾子さんの「祈りの歌」(アルバム「a light,a life 」収録)という曲をご存知の方はおられましょうか。泣けます。柳の頭の中では密かにこのお話のエンディングテーマだったりして。歌詞も引き込まれますが、この方の歌声がまた素敵。