篝火メインストーリー

王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅳ

サーティスは、居館にエルンストを招いて酒肴を並べたものの、しばらく本題に入ろうとしなかった。 疑念は当初からエルンストの裡に巣喰っていたが、そこに全く根拠はなかった。しかしサーティスがこの件に関して何かを知っている、というのは…至って漠然と...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅲ

エルンストが改めて調べてはみたが、ミティア=ヴォリス襲撃事件の経過はかなり曖昧だ。 ヴォリス家は停戦直前の政変に伴い当主が交代した。政変の直後から体調を崩しがちだったミティアは新当主・リオライのはからいで本邸を出て、幼時から住んでいた東別邸...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅱ

衛兵第三隊の隊舎。 シェノレスとの戦がようやく終わったばかりである。戦の爪痕もさることながら、終戦直前にイェルタ湾岸を襲った津波でツァーリ軍は甚大な被害を受けた。衛兵第三隊はその湾岸に居ながら難を逃れた数少ない隊の一つであり、隊士は事後処理...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催 Ⅰ

ミティアは雪が舞う中、森へ入った。 白い森に、白い嵐が舞う。館が見えなくなる程の所まで来て、ミティアは初めて足を止め、天を仰いだ。天に向けて、もう何度呼んだか知れぬ名を呟く。だが、涙が絡まり声は声を成さない。 雪精は冬女神シアルナの娘。風に...
王都暮色深く、雪催

王都暮色深く、雪催

喪ったものの痛みに耐えながら責任を果たそうとする宰相リオライと新国王リュース。だが、ぎごちなさは拭えない。事件は起こる。  アリエルを止められなかったことで悲嘆に沈んでいるミティアを狙ったのは誰か。政務に追われながら、リオライは憂う。増大するリオライの負担を憂慮する側近達。
残照の日々

残照の日々 Ⅴ

─────エルセーニュ、神官府本殿の大神殿。 神官府の東端に位置し、最初に朝日を受ける大伽藍である。 その内陣で、大神官リシャールは神像を前にして瞑想を続けていた。高窓は無人の身廊に静謐な光を投げかけるが、内陣はいま薄闇に沈んでいる。 遠く...
残照の日々

残照の日々 Ⅳ

「ア、アンリー様?」 ソランジュが薬を調えた盆を携えて帷帳を開けた時、起き上がって寝台を下りようとしているアンリーを見つけて、少しだけ慌てた。また、夢遊状態に入ったのかと思ったのである、だから、ソランジュを見たアンリーの台詞にはもっと驚かさ...
残照の日々

残照の日々 Ⅲ

マルフ島、シェノレス陣。 国王レオンを幕屋に迎えたルイは、形式を整える為の報告を済ませてしまうとさっさと人払いをした。「おう、よく来たな。どうした、今日はえらく神妙だったじゃないか」 そう言ってどっと疲れた態ていを露わにした友人の背を軽く叩...
残照の日々

残照の日々 Ⅱ

────シェノレス・シュテス島、神官府本殿。 その一隅に、アンリーは疲労しきった身体を横たえていた。 アンリーの実兄であり、本殿の首席枢機官リシャールが見舞いにきたときも、彼は本当に呼吸をしているのかと思うほど静かに眠っていた。「一向に…疲...
残照の日々

残照の日々 Ⅰ

シュテス島、エルセーニュ。 緋色の髪をした長身の青年が、放心したように早朝の海岸線を歩いている。 見るからに足取りが危ないというふうではなかったが、ひどく面窶おもやつれしたうえ白い神官衣に包まれた身体はすっかり痩せ衰え、深い赤褐色の瞳には生...