篝火は消えない

南海の風神

南海の風神 Ⅳ

「嘘だ…こんなこと…」 大神官リュドヴィックの長子リシャール。既に神官として神官府に入り、大神官の後継者となるための知識と経験をを積む日々を送っているが、弟アンリーと比較してやや精彩を欠く、と言われていた。だが、リシャール自身はその噂を否定...
南海の風神

南海の風神 Ⅲ

大陸暦885年、シェノレス・シュテス島(シェノレス本島)。「しまった!」 ルイは蒼白になった。出口が塞がれようとしている。このままでは、生き埋めだ。だが洞穴の出口へ向かって走り出そうとするルイの肩を、アンリーが押さえた。「アンリー!?」「だ...
南海の風神

南海の風神 Ⅱ

大陸歴899年シアルナの中月、シェノレスとツァーリの間で和約が成立した。  シェノレス・エルセーニュの総督府襲撃から数えて約2年。シェノレスは海という要害を十二分に生かして勝ち続け、カザル砦を占拠後はそこを橋頭堡として陸戦の準備を整えつつあ...
南海の風神

南海の風神 Ⅰ

停戦発効のためサーレスク大公領へ進軍したレオン達は、二十名に満たぬと見える部下だけを連れて薄明の丘陵に休戦旗を立てていた人物と邂逅する。 紫瞳黒髪の青年は、かの王太子と同年ほどと見えた。「ツァーリ宰相代行、リオライ=ヴォリス。 王太子アリエ...
南海の風神

南海の風神

講和は発効したが、それは大陸の平和と同義ではなかった。 マルフ紛争の勃発は、即位したばかりのシェノレス王に試練を与える。新国王や病臥するアンリーを案じながらも、ルイは紛争解決のためシュテス島を離れなければならなかった。 去来するのは、輝きに...
篝火は消えない

陽光消ゆ Ⅴ

百数十年前、ツァーリが周辺4国を押さえたときからの懸念。それは、ほかならぬその国々の連帯であった。 例えばシェノレス。過去に何度も反乱を起こしているが、いずれも散発的なものでツァーリの本土はおろか、総督府も落とせないままに鎮圧されている。シ...
篝火メインストーリー

陽光消ゆ Ⅳ

早まらせてはならない。何とか、獅子帰還の報を王太子ツェサレーヴィチに伝えなければ。 天窓を叩いた鳥が、鴉などではない…鷹…それも、リオライ麾下のシェラが使うエルウであることに気づいたとき、アレクセイ=ハリコフはもはや向き不向きを言っていられ...
篝火メインストーリー

陽光消ゆ Ⅲ

夕刻のような曇天の下、一触即発の空気が満ちていた。 つい先程、王都の森の中で落雷でもしたかというような轟音が鳴り響いた。その正体を確かめるべく、随所で衛兵隊のみならず貴族の私兵団の伝令が駆け回っている。そんな中で王都に入ったリオライは、サー...
篝火メインストーリー

陽光消ゆ Ⅱ

「リオライ様ぁ――――――っ!!」 薄明の王都北面。王都守備隊の検問を通過したリオライの一行は、不吉な茜色の朝焼けの空の下、王城の方向に騎影を見た。「ユアスか!」 リオライが手綱を引く。果たしてその騎手は彼が王都へ先発させた部下の一人、ユア...
篝火メインストーリー

陽光消ゆ Ⅰ

少女は、物心ついた頃からその邸にいた。 周囲には乳母や教師など世話をしてくれる大人の姿はあったが、父親なり母親なりの話を聞くことはなかった。ただ、『お館様』といわれる絶対的な主人が存在し、自分が此処で養われていることはその『お館様』の意向で...